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回転焼き、兵庫では「御座候」 なぜ全国で呼び名違う?

とことん調査隊

「御座候(ござそうろう)食べない?」。兵庫県出身の友人の言葉に戸惑った。記者(29)は大阪に赴任して4年目。意味がよく分からなかったが、どうやら中にあんこが入っていて、関東では主に「今川焼き」と呼ぶ菓子らしい。なぜ名前が違うのか。調べてみると、全国には他の呼び名がいくつも存在するという。その背景を探ってみた。

まずは、友人たちにオンライン飲み会で聞いてみた。東京都出身の友人は「今川焼き」と即答。一方、愛知県出身の友人は「大判焼きだと思っていた」と驚く。山形県出身の友人は声を大きくして「え? あじまんだよ!」と答えた。鹿児島県出身の記者になじみがある呼び名は「回転焼き」。白熱した議論で地方差が大きいことが分かったが、理由は分からないままだ。

そこで奈良大の岸江信介教授(方言学)を訪ねてみることにした。同教授は全国の回転焼きの呼び方の調査を行ったことがあるという。

「近畿地方だけでも約60種類の呼び方があります」。開口一番、驚きの答えが返ってきた。岸江教授がまとめた分布図を見てみると、回転焼き、大判焼き、今川焼き、御座候、おやき、あじまん、太鼓焼き、二重焼き……などの名前が並び、全国には多種多様な呼び方が広がっている。

同教授によると、呼び方の由来も様々だ。例えば、回転焼きは生地を回転させて焼いたことが由来。太鼓焼きは太鼓のような形をしているため。大判焼きは愛媛県の菓子製造機器メーカーが名付けたもので、同県も舞台になったベストセラー小説(獅子文六著「大番」)の人気にあやかり、売り出したという。

分布図を見てみると、関西で最も多く呼ばれているのは「回転焼き」のようだ。だが、兵庫県ではやはり、友人の口からも出た「御座候」と呼んでいる人が多い。その分布は関西一円に広がっている。

この呼び名は、兵庫県姫路市にある「御座候」という会社の商品に由来するという。同社の山田宗平社長に詳しい事情を聞いてみた。

山田社長によると、同社は1950年(昭和25年)に祖父が創業。社名は「お買い上げたまわり、ありがたく『御座候』」という感謝の思いを表したものだという。創業当初の商品名は「回転焼き」。上質な小豆や上白糖を使い、当時の一般的な回転焼きの価格の2倍に当たる10円で売り出したところ、行列ができるヒット商品になった。

やがて「回転焼き」ではなく「御座候をください」と注文する客が増え、商品名に転じた。山田社長は「ひと味違う品質と『御座候』という名前のインパクトが、広くお客様に呼んでいただける理由になったのでは」と語る。

原料や焼き方には今もこだわる。北海道産の小豆を使い、あんこを炊いたときに色や味のむらが出ないように、粒の大小や色などに厳しい基準を設定。昨年4月には店舗の内装を再現した研修施設を建て、職人の技術向上のため、自身の焼き方を確認できるカメラも設置している。

同社は店舗での実演販売を貫き、従業員の技能コンテストを毎年実施。昨年は顧客を決勝の審査員として招いた。「日常的に食べてもらい、地域の方に長く愛される店でありたい」と山田社長。

岸江教授によると、富山市の「七越焼き」や滋賀県長浜市の「暫(しばらく)」など、御座候と同じように、会社名や商品名がその地域の呼び方として広まる例もある。「一つの店舗ができ、そこの商品が売れることでその地域の呼び名として広まる。これが各地で繰り返されたことで全国に様々な呼び名が残ったのでしょう」

多種多様な呼び名の回転焼き。旅行などに出かけた際、その土地の呼び方を確認するのも楽しいかもしれない。(札内僚)

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