コロナ飲み薬、塩野義が治験開始 家で投与可能に
塩野義製薬は26日、新型コロナウイルスの飲み薬候補の臨床試験(治験)を国内で始めたと発表した。感染初期に投与して重症化の抑制と発熱やせきなどの症状改善を狙う。国内で承認されている軽症者向けの治療薬は点滴薬のみ。感染者が自宅で簡単に服用できる飲み薬が実用化すれば医療体制の逼迫を避けられるとして、各社が開発を進める。
塩野義の治療薬候補はウイルスの増殖に必要な酵素の働きを妨げる。各社が1日2回以上服用する飲み薬の開発を進めるなか、1回の服用を数日間続ける使い方を想定する。22日に始めた第1段階の治験では国内の20歳以上55歳以下の健康な成人75人を対象に投与し、安全性を検証する。第2段階以降の治験や承認申請のスケジュールは未定。

現在国内で承認されている新型コロナの治療薬は4つあるが、軽症者用の薬は中外製薬の「抗体カクテル療法」のみ。2種類の抗体を点滴で投与し、入院患者のみが対象となっている。入院する前に感染者の重症化を防げる治療薬のニーズは高い。
軽症者のコロナ治療に使う飲み薬は国内外の製薬大手が開発を進めている。富士フイルムホールディングスの抗ウイルス薬「アビガン」や、中外製薬が親会社のロシュから開発・販売権を得た薬候補「AT-527」などが国内で最終段階の治験中で、早期の実用化を目指している。
ほかにも米メルクの日本法人MSDが6月、国内で軽症者向けの飲み薬「モルヌピラビル」で最終段階の治験に入った。初期症状の外来患者に対して1日2回、5日間投与する。
米国などで同薬の治験を進めており、早ければ9月にも結果が判明する計画だ。米ファイザーも飲み薬で米国で第1段階の治験を進めるなど、メガファーマの相次ぐ参入で開発競争はさらに激化する可能性がある。
塩野義は免疫力を高めて新型コロナ患者の重症化を防ぐ別の治療薬候補についても、米バイオスタートアップのバイオエイジと開発を進めている。同社が米国やブラジルなどで高齢者を対象にした治験を進めており、結果が良好なら日本での治験も検討する。

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