大崎事件、再審認めず 第4次請求で鹿児島地裁

鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」の第4次再審請求審で、鹿児島地裁(中田幹人裁判長)は22日、「弁護団の新証拠は、無罪を言い渡すべき明らかな証拠には当たらない」として、殺人罪などで懲役10年が確定、服役した原口アヤ子さん(95)の再審開始を認めない決定をした。
第1次の地裁、第3次の地裁と福岡高裁宮崎支部が開始を認めたが、いずれも上級審で覆っていた。
地裁は元夫(故人)の再審開始も認めなかった。弁護団は高裁宮崎支部に即時抗告する準備に入ると明らかにした。
確定判決によると、79年10月12日夜、原口さんの義弟だった男性(当時42)が酒に酔い溝に転落。近隣住民2人が男性宅まで送り届けた。日ごろの生活態度に不満を募らせた原口さんが元夫らと共謀し、首をタオルで絞め殺害、翌日未明に遺体を牛小屋に遺棄した。
弁護側は司法解剖写真などから救急医が調べ直した鑑定書を基に殺人事件ではなく、溝への転落が原因の事故死だったと主張。中田裁判長は決定理由で、鑑定が限定的な情報から推論を重ねたとして「窒息死との認定に合理的疑いが生じるとは言えない」と退けた。
供述心理学に基づく鑑定も「(殺害時刻の裏付けとなった)住民の供述の信用性を減殺しない」と指摘し、「確定判決の判断に動揺は生じない」と結論付けた。
認知症などで県内の病院に入院している原口さんは、面会した支援者から決定内容を伝えられ、うなずいて応じた。
鹿児島地検の桑田裕将次席検事は「適切な判断をされたと考えている」とコメントした。
原口さんは捜査段階から一貫して否認し、事件への関与を示す直接証拠はなかったが、81年に判決が確定。刑期満了で出所後の95年に初めて再審請求した。第4次請求審は今年1月に審理が終結。これまでと同様、死因や関係者の供述の信用性が争点となっていた。〔共同〕