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京くみひも、繊細に息長く ビジュアルで迫る現場

現場探究

(更新)

糸を巻き付けた複数のボビンが、右に左に、時には交差しながら素早く動き回る。60年以上前から使っている機械も並び、むき出しの歯車がかみ合う。「京くみひも」ができあがる現場はからくり屋敷のようだ。

【LBSローカルビジネスサテライトの動画をこちらに】

京都の伝統工芸品である京くみひもは、複雑かつ繊細に糸を組み上げ、強度も兼ね備える。織物や染め物の文化とあいまって色彩は優美で、和装が主流だった時代には着物の帯締めなどとして広く使われた。京都市や宇治市などが産地として知られている。

昇苑くみひも(京都府宇治市)では量が必要な注文には機械を用いる。しかし、最先端の設備を使うのではなく、年季の入った機械が主役だ。所狭しと60台ほどが並び、機械の間を縫うように数人が動き回る。

柄や太さを計算し、糸をボビンに手で慎重に巻き付ける職人もいる。波打ちながら円を描くように敷かれたレールに沿って、ボビンが移動。レールの敷き方や動かし方によって、約20種類のひもを組める。

複雑な模様や一点物の依頼など特別な注文は手作業で応じる。伝統工芸士の梅原初美さんは糸が巻き付いた68個の木玉を迷うことなく交差させ、隙間ができないように組んだ糸を木で打ち付ける。

子供の時からじかに目にし、技を習ってきた。一定のリズム、力加減で打ち付けるのがカギという。「手順通りにやれば誰でもできるかもしれないが、すっと真っすぐな糸に組み上げるのが難しい」。模様のついたひもを組む場合には、1時間で数センチメートルしか進まないこともある。

部長の能勢将平さんは「アナログな組み方を理解しているからこそ、機械の不調の原因や調整すべきポイントが分かる」と話す。機械を修理できる事業者がほとんどいなくなり、自分たちで担うという。

1948年(昭和23年)と戦後スタートの企業は、花や球などの形状に作り上げる「結び」の技術もあわせて受け継いできた。社内の十数人の作り手だけでなく、技術を伝えた約60人の地元住民も担い、手間のかかる生産を支えている。

京くみひもを帯締めとするのは、この100年ほどの用途だという。中国から技術が伝わり、平安時代に仏具や寝具、貴族の装飾品として使われた。武士の時代にはよろいや刀などにも用いられ、その後に庶民にも広がったとされる。

和装の機会が減るなか、昇苑くみひもは新たな用途を探る。携帯電話のストラップが2000年ごろにヒットしたのを契機に、アパレルやジュエリー、アクセサリー、インテリア、お守りなどもそろえる。

あるとき、時計のベルトを京くみひもでつくりたいとの依頼が寄せられた。サイズ調整の穴などの難題に刺しゅうの技を取り入れ、商品化にこぎつけた。

新型コロナウイルス禍で生まれたのが、マスクに付けるアクセサリーであるマスクチャーム。能勢さんは「伝統工芸品という古いものでも現代の人を楽しませられる。伝統工芸をベースに現代風な『ひも』の役割を見つけたい」と力を込める。

(張耀宇)

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