容疑者自殺、直前の巡回怠る 大阪府警が18人処分
女性会社員への殺人容疑などで再逮捕された容疑者(当時28)が9月、大阪府警福島署の留置施設で自殺した問題で、府警は14日、福島署が自殺直前の巡回を怠り、容疑者の私物保管庫の点検を約1カ月間実施しなかったとする検証結果を公表した。本部にはいずれも適切に行ったと虚偽の報告をしており、「不適切な対応」が重なった末に重大な事態を防止できなかったと結論付けた。
府警は14日、保管庫の点検を行ったとする虚偽の報告書を作成したとして、福島署の男性警部補ら3人を虚偽有印公文書作成・同行使容疑で書類送検。一連の問題を受け、福島署の留置管理課長ら2人を減給1カ月、同署長ら5人を戒告の懲戒処分とし、本部留置管理課長ら11人を本部長訓戒などとした。
府警の久田誠警務部長は同日、「大阪府警に対する信頼を損なう事態を招き、心よりおわび申し上げる」と謝罪した。
死亡したのは女性の養子で無職、高井凜容疑者。同容疑者は7月20日に大阪府高槻市の女性との養子縁組届を偽造したとして、府警に有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕され、同日以降、福島署内の留置施設に単独で収容されていた。8月25日に殺人容疑などで再逮捕。9月1日午前7時2分に居室内で、首をつった状態で発見され、その後死亡した。
居室の巡回について、容疑者の自殺をほのめかす便箋が見つかり、同署は夜間の巡回の回数を増やす方針とした。8月31日午後9時から9月1日午前7時の間は本来50回の巡回をすべきだったが、15回しか行われなかった。
府警は当初、容疑者が首をつった状態で見つかる18分前の9月1日午前6時44分ごろに布団で横になっている様子を署員が確認したと説明。ただ、自殺直前の同日6時台は一度も巡回せず、午前6時36分に容疑者が署員に時間を尋ねたのが最後の動静確認で、署員が噓の報告をしていたという。
保管庫には破れたTシャツなどが複数枚残され、裾の部分を破いて自殺に使ったとみられる。内規では保管庫の点検は月2回以上実施することになっている。報告書によると、担当署員は直前の約1カ月間は点検していなかったが、自殺6日前の8月26日に点検を実施したとの虚偽の記録を作成していた。
自殺の経緯を巡っては、死亡2日前に居室内で自殺をほのめかす内容の便箋が見つかったにもかかわらず、本部留置管理課幹部が「(自殺の)予兆は把握していない」などと報道各社に虚偽の説明をしていた。報告書では「不適切な対応だった」と認定した。