関西ホテル開業ラッシュ、勝算は インバウンド集客競う
ホテルビジネスまとめ読み

2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)を前に、関西でホテル開業ラッシュが続いています。22年は大阪で星野リゾート「OMO7」が話題に。兵庫・淡路島には米マリオット・インターナショナルと積水ハウスによる「フェアフィールド・バイ・マリオット」が開業しました。
23年も関西には「インターコンチネンタル」を運営する英IHGホテルズ&リゾーツの日本初ブランドや、繁華街・ミナミにカンデオホテルズが仕掛ける「寺院一体型」ホテルなどが開業を控えています。国内外からの旅行客回復を見すえ、勝ち残るべく工夫を凝らす各ホテルの戦略に迫ります。 (内容や肩書などは公開当時)

星野リゾート、大阪に根付くか 狙いは地元客や家族連れ
星野リゾートが大阪で新たな客層を狙ったホテルビジネスに挑んでいる。主な狙いは地元客や家族客だ。2025年の大阪・関西万博をにらみ、訪日客向けに参入する外資系高級ホテルとは一線を画す戦略だ。新型コロナウイルス禍が続き、大阪からホテルを撤退する企業は相次ぐ。星野リゾートの戦略は吉とでるか。

とある平日の午前7時30分。星野リゾートが大阪・新今宮で運営する「OMO7大阪」の朝食会場は大勢の人でにぎわっていた。目当ては「大阪の味」を含む豊富な種類のビュッフェで、この日の目玉は宿泊客の目の前で調理するネギ焼きとキツネうどんだ。調理を担当するスタッフは大阪出身だった。
「今日はどちらから?」「枚方から。前から気になっていたので、娘に連れてきてもらって」。同じく大阪出身という宿泊客の女性と関西弁で話が弾む。女性は「ホテル周辺のイメージが昔と変わったから、実際に見てみようと思って」と話す。
その日の午後4時。「ほな行こか!」の掛け声と共に4人の宿泊客らが出発したのは、大阪・西成を巡るツアーだ。1時間の行程で伝統工芸品を作る老舗や、町工場などを回る。この回は無料だが、有料で串カツを楽しむツアーなどもある。訪れるのは有名店だけではなく、従業員が実際に周辺を歩いて見つけたスポットだ。こうした工夫が「地元住民にとっても新たな発見がある」と話題を集める。…続きを読む
星野佳路代表「供給過多、苦境だからこそ好機」

星野リゾートは大阪府内で2ホテルを開業する。星野佳路代表は、客室の供給過多に新型コロナウイルス禍が重なって大阪のホテル業界は厳しい事業環境にあると分析。「厳しいからこそ当社の発想力を信じて提案を受け入れてもらえるチャンスになっている」と話した。
星野氏は大阪での供給過多の背景に、2025年の大阪・関西万博やカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を見込んだ動きがあると指摘した。また、国内のホテル業界について、観光地と都市で明暗が分かれており、都市は苦しい状況だとした。…続きを読む
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兵庫・淡路島にマリオット開業 インバウンドがターゲット
積水ハウスと米ホテル大手のマリオット・インターナショナルは兵庫県南あわじ市の道の駅近くに宿泊特化型のホテルを開業した。淡路島には初めての進出で、2023年夏には淡路市にも同様のホテルを開業する予定だ。宿泊客のうちインバウンド(訪日外国人)を5割とする目標を掲げ、観光ツアーで地元と連携する。

開業した「フェアフィールド・バイ・マリオット・兵庫淡路島福良」は淡路島南西の福良港に隣接する「道の駅福良」から徒歩3分程度の距離に立地する。建物は4階建てで、広さ約25平方メートルの部屋が100室ある。ホテル内にレストランや娯楽施設を設けず、宿泊者には道の駅や近くの居酒屋などの利用を促す。
淡路島は関西からの旅行客が大半を占め、インバウンドをいかに呼び込むかが課題だ。淡路島観光協会によると、新型コロナウイルスの感染拡大前のインバウンドの割合は3%にとどまっていた。南あわじ市の守本憲弘市長は「淡路島は海外旅行客にあまり知られていなかった。マリオットが持つネットワークに期待する」と話す。
積水ハウスの仲井嘉浩社長は「淡路島はここ数年でさらに急速に観光地化しており、ポテンシャルが高い」とみる。島内に2軒のホテルを開業することで、大阪や京都に滞在するインバウンドを呼び込みたい考えだ。…続きを読む
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カンデオ、大阪・ミナミに寺覆うホテル 11月開業

大阪・ミナミの御堂筋に面した古刹「三津寺」の境内をホテルと一体で再開発するプロジェクトが進んでいる。
東京建物とカンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(東京・港)、宗教法人三津寺が計画する「寺院一体型」の「カンデオホテルズ大阪心斎橋」。本堂を覆うように地下1階・地上15階の建物を設け、2023年11月26日の開業を予定している。オープン後は、三津寺が行う「絵写経」を体験する宿泊プランなども検討するという。…続きを読む
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リーガロイヤルが大規模改修へ カナダ系投資会社に売却
新勢力を迎え撃つべく、伝統ある名門ホテルも動く。ロイヤルホテルは、主力のリーガロイヤルホテル(大阪市)の土地と建物をカナダ系の不動産投資会社に売却すると発表した。土地・建物の売却額は非公表だが、500億円台半ばとみられる。売却後も運営を受託して営業を続ける。不動産投資会社はロイヤルホテルに約3割出資して筆頭株主になる。新型コロナウイルス禍で悪化していた財務体質を改善し、リニューアルして海外富裕層らの取り込みを狙う。

リーガロイヤルホテルは1000室以上の客室を持ち、大阪を代表する高級ホテルのひとつ。カナダの大手生命保険会社傘下の不動産投資会社であるベントール・グリーンオーク・グループ(BGO)に土地と建物の信託受益権などを3月末に譲渡する。BGOは取得後に135億円を投じて2025年3月までに客室や宴会場など大規模な改修を実施する。
世界最大級のホテル運営会社であるインターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)とも提携し、「リーガロイヤルホテル(大阪)―ヴィニェット・コレクション」として25年にリニューアルする。IHGの販売網を活用して海外から幅広く集客する。
BGOは前身のグリーンオークを含めて日本で約7000億円の投資実績がある。19年には武田薬品工業の大阪本社ビルなどを購入した。BGOはホテル不動産の購入と併せて、ロイヤルホテル本体にも出資する。約33%の筆頭株主となり、代表取締役1人を含む取締役2人の指名権も得る。…続きを読む
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