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尾瀬、シカとの攻防20年 温暖化で進む食害に対抗策

福島、栃木、群馬、新潟4県にまたがる尾瀬国立公園で、シカの食害を防ぐ闘いが20年以上続いている。温暖化で生息域が拡大し、ミズバショウやニッコウキスゲなど登山者に人気の花も被害に。環境省などは群生地を柵で囲い対抗するが、被害は公園内の2千メートル級の山へと広がっている。

「シカが掘った跡ですね」。6月中旬、福島県檜枝岐村にある標高1660メートルの尾瀬沼。環境省のレンジャーが指さした先は、数メートル四方だけ湿原の黒い土がむき出しになっていた。ミズバショウの根や株を食べようと地面を掘り返したという。

深い雪に弱いシカは尾瀬ではあまり見られなかったが、1995年ごろから食害が出始めた。夏から秋に約30キロ南東の栃木県日光地域から遠征してくる個体が増えたほか、雪解けの早まりに伴い尾瀬で出産する雌も出てきた。シカは生まれた場所に戻る習性があり、頭数増につながっている。

花や葉を食べられた植物は翌年への養分が蓄えられず、群生地が消える恐れもある。環境省や地元自治体などは2000年から本格的な捕獲に着手。12年からは柵を設置し、14カ所の総延長は計10キロに及ぶ。

柵内側の植生は回復傾向だが、外側の食害は止まらない。日本百名山に数えられる燧ケ岳(2356メートル)や会津駒ケ岳(2133メートル)でも被害が確認されたが、急峻(きゅうしゅん)な地形が柵設置などの対策を困難にしている。

日光地域ではシカがササを食べ尽くした結果、昆虫が減り鳥がすみかを失うなど生態系に変化が生じた。環境省の桑原大・国立公園管理官は「尾瀬でも同じことが起きる可能性がある。特にミズバショウなど主要な草花への被害は、生態系全体への影響も大きい」と危機感を募らせる。

地元からは「花が減り、観光客が残念がっている」との声が上がる。尾瀬の風景は重要な観光資源であり、経済面からも保全は重要だ。

環境省はわなや猟銃での捕獲・駆除を強化し、24年までのシカ数半減を目標に掲げる。背景に「気候変動」という大テーマを抱えるが、桑原管理官は「生態系は一度壊れると復元が困難。だからこそ今守らねばいけない」と力を込めた。〔共同〕

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