大阪・吹田の交番襲撃、被告に逆転無罪 大阪高裁
2019年6月、大阪府吹田市の交番前で警察官を刃物で刺して拳銃を奪ったとして、強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告(36)の控訴審判決が20日、大阪高裁であった。斎藤正人裁判長は犯行当時に被告は心神喪失状態にあり、刑事責任を問えないと判断、懲役12年とした一審・大阪地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
男性被告は起訴前と起訴後の鑑定で精神疾患と診断されていた。刑事責任能力の有無が最大の争点だった。
21年8月の一審判決は「精神疾患が犯行に及ぼした影響が大きい」と指摘する一方、被告が虚偽の110番通報で被害に遭った警察官を1人の状態にしたり、逃亡時に衣服を捨てたりした経緯を重視。
「臨機応変で合理的な行動をとった。善悪を判断し、行動を制御する能力を全く欠いた状態ではなかった」とし、限定的な責任能力を認めた。
これに対し、二審・大阪高裁の斎藤裁判長は、一審判決について「精神疾患が犯行やその前後の行動にどのように、どの程度影響したのか何ら判断を示していない」などと疑問を呈した。
そのうえで、警察官から拳銃を奪おうとした動機は「極めて唐突かつ奇異だった」とし「症状が悪化して疾患の影響が強まる中、本来の人格・行動傾向とは離れた犯行に及んだ」と言及。心神喪失の状態にあり、刑事責任能力がないと結論づけた。
大阪高検の小弓場文彦次席検事は20日、「判決内容を精査した上で適切に対応する」とのコメントを出した。
被告の起訴内容は、19年6月16日午前、吹田市の千里山交番前で、警察官の胸などを包丁で刺し、実弾が入った拳銃1丁を強奪したなどとするもの。強盗殺人未遂のほか、公務執行妨害、銃刀法違反の罪に問われた。