放置自転車ワースト返上へ 名古屋市、IT活用を検討

放置自転車台数が全国ワーストの名古屋市が、ITを活用して効率的に撤去するシステムの導入を検討している。「放置が新たな放置を呼ぶ状況」(市担当者)を打開し、汚名返上を図りたい考えだ。
国土交通省によると、2019年度の名古屋市の放置自転車は6631台で、全国の市区町村で最多。主要駅での放置台数1位は大阪市の動物園前駅(新今宮駅)の1062台だが、2位は名古屋市の久屋大通駅(921台)で、10位以内に名古屋市内の計5駅が名を連ねる。

放置自転車対策を担当する市職員、佐藤貴嗣さん(48)は「名古屋は他の都市と比べても、地下鉄が張り巡らされていて、自転車で駅に向かう人が多い」と話す。だが駅周辺の駐輪場は不足しているという。
市は、撤去するかどうかを、市職員が放置の現場を見て判断するルールにしている。同市中区の栄保管場所などで撤去した自転車を保管しているが、人手が足りず撤去が追い付いていない。
そこで市は20年度、駐輪場事業などを手掛ける「芝園開発」(東京都)が開発した自転車回収システムを撤去に活用できないか実験した。
見回り役のスタッフが放置されたとみられる自転車に「警告札」を張り、記載されたQRコードと自転車を撮影。するとデータベースに画像と時間、位置情報などが自動で登録される。

15分ほどたっても移動されない場合に、スタッフが事務所にいる市職員に撤去依頼を送信。職員はリモートでデータベースの画像などを確認して、撤去許可を出す仕組みだ。
1人の職員が複数の場所の許可を出せるため、効率良く撤去できた。地域ごとの傾向分析も可能だという。市は数年以内のシステム導入を目指すことにした。
有料駐輪場の増設や放置禁止区域の指定拡大などで、市内の放置自転車は減少傾向にあるが、佐藤さんは「まだまだ減らせる」とワースト返上へ意欲をみせている。
〔共同〕