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六甲の急斜面、災害から街守れ ビジュアルで迫る現場

現場探究

(更新)

神戸市の北部に連なる六甲山系。急斜面の上で、ホースを背負った作業員が命綱を頼りに移動する。他の作業員から掛け声がかかると、先端から勢いよくセメントの入ったモルタルが吹き出し、手慣れた動きで斜面に向かって吹き付けていく。地震や水害などで起こる土砂崩れを防ぐための補強工事の一幕だ。

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傾斜角約35度という急勾配の現場から見下ろすと、手の届きそうな距離に住宅地が迫る。この斜面が崩れたらと考えるとゾッとする近さだ。現場の担当者は住宅地を眺めながら「住民の命を守っている実感とやりがいがある」と胸を張る。

この現場で用いられているのは、斜面に沿って金網や鉄筋で格子状に枠を作り、そこにモルタルを吹き付ける工法だ。斜面の凹凸に合わせて鉄筋を曲げ、面にしっかりと枠がかみ合うように調整。枠が交差する部分には固い地盤まで届くようにアンカーを打ち込み、強度を高めている。

1995年の阪神大震災では、六甲山系の1400カ所以上で斜面が崩落。翌96年から始まったのが「六甲山系グリーンベルト整備事業」だ。斜面の補強などの土砂災害対策、植樹などの森林保全活動に力を入れてきた。

「六甲山近くでは、水害が度々起きてきた」と六甲砂防事務所の西村信彦副所長。六甲山はもともとは緑豊かな山だったが、明治中期には薪炭材・建築用材の伐採が進み「はげ山」といわれるほどの状態になった。風化した花こう岩が多いうえ、森林の保水能力が低下し、山はもろくなった。

同事務所によると、六甲山系では1893年の水害をきっかけに本格的に砂防工事が始まった。だが、1938年に阪神大水害が発生。土石流が市街地を直撃するなど695人もの死者・行方不明者を出した。「植林や砂防ダムの整備を進めたが、六甲山系全体までは整備が追いつかなかった」と西村氏は語る。

阪神大震災の翌年に始まったグリーンベルト整備事業では、過去の災害を教訓に山系全体の災害対策を進めた。この間、2014年の台風11号、18年の西日本豪雨などが各地に爪痕を残したが、六甲山系では土砂や流木が山の中腹の砂防ダムなどで止まり、被害が軽減された。これまでに整備した砂防ダムは500基を超え、西村氏は「確実に災害に強い山になってきている」と話す。

土砂災害対策の工事などと並行して実施しているのが、市民らが植樹活動などに参加する「みんなの森づくり」事業だ。六甲山を守る取り組みを広く知ってもらい、森林保全や環境保護の意識を高めてもらうことを目的としており、丈夫な木を育てるために必要な下草刈りや間伐などの活動に、40以上の市民団体や企業などが参加している。

神戸市内の小学生が自分で育てたドングリの苗木を植樹するプログラムも実施しており、今年度も秋から4校が参加した。1000万ドルの夜景ともいわれる神戸の市街地。身近な山である六甲を災害から守る活動があればこそ、街の灯が輝いて見えるのだと再認識した。(札内僚)

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