公示地価、大阪商業地3年ぶり上昇 うめきた2期に期待

2023年の関西の商業地の公示地価(1月1日時点)は新型コロナウイルス禍が落ち着き始めたことによる経済活動の活発化で、多くの地点が上昇した。大阪府や兵庫県は3年ぶりに上昇に転じ、京都府も2年連続のプラスとなった。一方、インバウンド(訪日外国人)依存が強かった地点では依然マイナスが続き、完全回復には至っていない。
大阪の商業地は前年の0.2%マイナスから2.5%のプラスとなり、3年ぶりに上昇した。JR大阪駅の「グランフロント大阪南館」は1.4%上昇し、3年連続で関西商業地の最高価格地点だった。同駅北側の再開発地区「うめきた2期」への期待感から、府内の商業地上昇率トップ10のうち、6地点をうめきた2期に近い大阪市の福島区と北区が占めた。

企業の動きも活発だ。「将来的な企業価値の向上に最適な戦略と判断した」。1月、ロイヤルホテルは主力のリーガロイヤルホテル(大阪市、RRH)の土地と建物をカナダ系不動産投資会社のベントール・グリーンオーク・グループ(BGO)に売却すると発表した。25年3月までに大規模改修をするが、運営はロイヤルホテルのスタッフが引き続き担う。
運営にあたり外資系ホテルグループのインターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)と提携し、「IHGが持つネットワークを活用し、都市開発などで今後増加が見込まれる海外からのビジネスマンや富裕層の観光客を取り込む」(ロイヤルホテル)。
府内では他にも、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)や北大阪急行電鉄(大阪府豊中市)の箕面市までの延伸など、中長期的な大規模事業が目白押しだ。万博会場となる夢洲(ゆめしま)に近い「大阪市港区波除2丁目5番21」は7.1%上昇し、「箕面市船場東3丁目1番1」も8.8%上がった。
府内商業地で上昇率が13.6%と最大だったのは「堺市美原区平尾290番3」。同市内では商業施設「ららぽーと」が開業している。
不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL、東京・千代田)の調査によると、京都や兵庫を含む大阪圏の22年10〜12月の不動産投資額は、前期比106%増の1577億円。同社関西支社の山口武リサーチディレクターは「コロナ後の成長を見据えて取引する国内外の投資家は多く、投資意欲は衰えていない」とする。

コロナ禍前に訪日外国人需要で沸いたミナミも、国内外からの観光客増加に伴いこれまでの下落傾向が底打ちしつつある。府内商業地の地価上位10位までに含まれる心斎橋や難波周辺の地点はいずれも横ばいか上昇だった。
23年1月の関西国際空港の外国人旅客数は前年同月比で70倍近い約75万人に上り、不動産鑑定士の山内正己氏は「入国制限の緩和もあり、22年後半からミナミに人が戻った。物価高や世界情勢など不確定要素はある」とみる。

人流回復の恩恵を受ける府県は他にもある。京都府は2.5%上昇し、2年連続でプラスを維持した。京都市下京区は4.8%、東山区は4.2%と繁華街や有名観光地のある地域で上昇が目立った。京都市観光協会によると、市内主要ホテルの23年1月の客室稼働率は 55.2%だった。コロナ禍前の19年1月(65.6%)には及ばないが22年1月の32.3%からは大きく伸びている。
上昇率が最も高かった地点は、京都市立芸術大学が移転するJR京都駅東側エリアの京都市下京区材木町で、13.6%上昇した。駅南側では建物の高さ制限を見直す規制緩和案も検討が進んでおり、大和不動産鑑定の村山健一氏は「京都駅周辺で高まる再開発の機運が、地価にも反映された」と話す。
兵庫県も1.3%のプラスとなった。上昇は3年ぶり。商業地で最高地点となった神戸市の三宮センター街は飲食店などの需要が高まり2.1%上昇した。不動産鑑定士の尾崎潤氏は三宮センター街周辺の店舗状況について「中小規模の小売店舗は22年に埋まってきた」と話す。

一方、大阪・ミナミの黒門市場は1.4%の下落で、同府内の商業地では下落率が最も高かった。同市場を歩くと、閉店を知らせる張り紙が目に入る。黒門市場商店街振興組合の国本晃生事務長は「外国人観光客はコロナ禍前の6割程度にまで戻ったが、まだ回復余地はある」と話す。
(山下宗一郎、木村海大、玉岡宏隆、篠崎瑠架)
住宅地、兵庫県で15年ぶり上昇 神戸市がけん引
大阪府の住宅地は0.7%上昇し、2年連続で上がった。利便性の高い大阪市で1.6%の上昇となったほか、ベッドタウンとして人気の北大阪地域が1.1%のプラスだった。不動産鑑定士の山内正己氏は「特に大阪市中心部でタワーマンションの供給が多い」という。一方、中心部から遠い南河内地域は0.1%下落した。
兵庫県はプラス0.7%で15年ぶりに上昇した。901ある住宅地の価格判定地点のうち504地点で地価が上がった。22年の359地点に比べ4割増加した。中でも神戸市は1.2%のプラスだった。16年に開業したJR摩耶駅周辺に商業施設ができ利便性が高まったことで、住宅地の上昇率上位を神戸市灘区が占めた。
0.7%上昇した京都府では、京都市の全11区で上昇し、前年の0.5%から1.2%と上昇幅が拡大した。市外では長岡京市が2.0%の上昇だった。京都市内中心部のマンション価格が高騰しているため、阪急電鉄やJR沿線で大阪と京都どちらにもアクセスが良い長岡京市の需要が高まった。
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