京都市南部、高層化へ オフィスや住宅の高さ緩和案 - 日本経済新聞
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京都市南部、高層化へ オフィスや住宅の高さ緩和案

京都市は17日、市の南部などで建物の高さ制限を見直す規制緩和案の内容を公表した。京町家が多く残る市中心部は制限を維持する一方で、複数の地域でより高いビルの建設を認めてメリハリをつける。2007年から建物の高さを厳しく制限してきた景観政策を大幅に見直し、オフィスや住宅供給を増やす狙いだ。

新たな都市計画案では5つの地域で高さ制限を見直す。JR京都駅の南側エリアや南区の工業地域、JRの山科駅や向日町駅周辺などが対象だ。京都駅の北側で昔ながらの京町家などが多く残る通称「田の字エリア」は変更しない。

京都駅南側では企業の研究施設などの立地を促す。大通り沿いの高さ制限を現在の20~25メートルから31メートルに引き上げてビルなどを供給しやすくする。らくなん進都と呼ぶ南部の工業地域では容積率を現在の400%から最大1000%に上げてオフィスなどを設けやすくする。

住宅の供給増も目指す。東部のJR山科駅付近では大通りに面した要件を満たす土地は高さ制限をなくす。建物の1階部分に店などを設けるといった条件を満たせば20階建て以上のタワーマンションなども建てられるようになる。

さらに、南部の向日町駅周辺なども一部で高さ制限をなくす。京都市の門川大作市長は「隣接する宇治市や向日市では高層マンションの開発が増え、京都市との違いに違和感を持つ市民も多かった」とし、市の境目付近での開発の不均衡に配慮して若者や子育て世代の呼び込みを目指す。

京都市は古い京町家などの街並みや景観を守るため、07年から建物の高さを制限する全国でも厳しい「新景観政策」を実行してきた。学校やオフィスなどで特例許可として制限を緩和する制度はあったが「使いにくかった」(門川市長)。

街並みの保全には効果があったが、オフィスや住宅の供給不足で企業や若い世代が市外に流出する課題が生まれた。市の人口は1月時点で138万人と21年の1年間だけで約1万1900人減った。減少幅は全国の市町村で2年連続で最大だった。

こうした課題に対応するため、京都市は21年に都市づくりの基本方針「京都市都市計画マスタープラン」を見直した。有識者委員会で座長を務めた立命館大学の塚口博司名誉教授は「課税データなどを元に地域を分析し、都市の潜在力を伸ばせる場所を洗い出した」と話す。

見直し案はホームページなどで公開して11月16日まで市民からの意見を受け付ける。市はその後条例などの手続きを進め、「できるだけ早く都市計画として決定したい」(門川市長)考えだ。早ければ年度内にも決定できる可能性があるとしている。

門川市長は「景観を大事にしながら、若い人たちが市内に住み続けられる環境も確保しなくてはならない」とする。高さ規制による街並みの保全は訪日観光客の呼び込みなどに一定の成果はあった。今後は景観と都市開発のバランスをどうとるかが試されることになる。

(新田栄作)

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