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地元に愛される大阪公立大に 辰巳砂昌弘さん

関西のミカタ 大阪府立大学学長

たつみさご・まさひろ 1955年大阪府生まれ。大阪大院修。大阪府立大教授を経て2015年工学研究科長。19年から学長兼公立大学法人大阪副理事長。専門領域は無機材料化学、固体イオニクス、ガラス科学。工学博士。

■2022年4月、大阪の「知の拠点」として期待を集める大阪公立大学が生まれる。初代学長として大阪市立大学との統合による船出を任されたのが、大阪府立大学学長の辰巳砂昌弘さん(65)だ。大阪・森之宮で25年4月に開く新キャンパスでは、両大学の伝統を生かし教育・研究とスマートシティの街づくりを担う。

大阪公立大の第1期生は約2850人と国公立大では大阪大学、東京大学に次ぐ規模となる。府立大にはない文学部や、市立大にはない農学部など12学部・学域、15研究科で約1万6000人の学生が学ぶ。両大学の強みを持ち寄る理学、工学、医学の分野では創薬などでこれまでにない研究成果が期待できる。

森之宮の新キャンパスは、大阪城東部地区で大阪府・市が取り組むスマートシティ構想の中核施設だ。住民と共に先端医療の実証実験や、あらゆる側面のデータを収集、分析し、豊かな暮らしに結びつける研究などのフィールドとなる。全学部の学生が入学から2年間を過ごしながら、自分たちと一緒に街が育っていく様を実感できる。

3年生からは杉本キャンパス(大阪市)や中百舌鳥キャンパス(堺市)などで専門分野に進むことになる。森之宮での日々を共にした仲間とのつながりを大事にしてほしい。私が学生時代を過ごしたキャンパスは当時、大阪府吹田市に移転してから日が浅く、空き地ばかりでよく仲間と野球をしていた。あの頃、「住民の皆さんと一緒に街を創ろう」と呼びかけてもらっていたら、きっと違った思いを抱いていただろう。

■市立大の杉本キャンパスは主に法・商・経済や理学系の研究拠点となる。府立大の中百舌鳥キャンパスは持続可能な社会への課題解決に取り組む現代システム科学域を置き、ものづくりなど地元中堅・中小企業を支援する地域に根ざした拠点を目指す。

大阪は日本の地方を代表する地域だ。大阪の都市型大学として地域の課題を解決し、活性化を促すことが、他の地域へのヒントとなる。グッと敷居を低くして、地元の経営者や技術者が気楽に相談に訪れ、一緒に研究に取り組むような雰囲気を生み出したい。

ただ、地域から必要とされるためには、世界が認める研究実績が必要だ。中百舌鳥にはドイツの人工知能(AI)研究機関はじめ各国・地域から人材が集まるイノベーションアカデミーとして機能を強化していく。目指すのは米国の有力州立大学のような地元に愛され、世界的な存在感を示す高度研究型大学だ。

■統合する両大学の淵源はともに明治時代にまで遡る。市立大は発足からほぼ、その姿を守ってきたのに対し、府立大は他大学との統合の経験がある。公立大発足を機にこうした違いを乗り越えて新たな歴史を刻もうとしている。

府立大で研究者、教育者として歩み始めてから何度か組織再編があったが、05年の大阪女子大学、大阪府立看護大学との統合は大きな経験だった。女子大、看護大ともに大阪はじめ全国に優れた人材を輩出してきた歴史がある。その重みは学長に就任してからより実感するようになった。市立大との統合後も女子大、看護大の同窓会は存続する。府立大も含め3大学140年の伝統を引き継ぐため記念事業基金を設けた。

市立大の先生方には、組織を守り発展させていくことへの信念を感じる。ただ、共に変わっていかねばならない。何を守り、何を変えるのか、これまでの統合の経験を生かし、円滑に新体制へ移行できるよう、心を砕いている。

サークル、部活動など学生への対応も課題だ。在学生は卒業まで市立大生、府立大生で、新入生は公立大生となる。大学統合が学生生活に影を落とすことがないよう、学生たちとの対話を心がけていきたい。(聞き手は髙佐知宏)

記者会見で大阪公立大学の英語名称を発表する学長に就任予定の辰巳砂氏(左)と公立大学法人大阪の西沢理事長(中)。右は大阪大学の西尾総長(12日午後、大阪市阿倍野区)

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