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日本・千島海溝地震、津波減災急ぐ 震災超え被害想定も

切迫しているとされる日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震。国が2021年末に公表した被害想定が、11年の東日本大震災から再起を図ってきた被災地の新たな試練となっている。地域によっては11年前の浸水や被害を上回る恐れがある。政府は「対策次第で被害は軽減できる」と強調。被災地では困惑しながらも、減災への取り組みが始まった。

「まだ震災から11年しかたっていないのに、考えられない数字だ」。岩手県宮古市の山野目弘さんは戸惑いを隠せない。

東日本大震災による岩手県の死亡・行方不明は関連死を含め6255人。日本海溝・千島海溝巨大地震の想定は、岩手県で最悪約1万1千人の死者が出るとした。「こんなに多くの犠牲者を、絶対に出してはいけない」

震災では、高さ8メートル以上の防潮堤を越えた津波に津軽石地区の自宅が流された。近くに再建し、防潮堤も約10メートルの高さにかさ上げされたが、新たな巨大地震の津波の高さは宮古市の場合、最大29.7メートル。「今度こそ、集落は全滅する」と怖くなった。

岩手県久慈市湊町の七十苅良一・中組町内会長は、津波に備えた避難タワーを見上げ、ため息をついた。鉄骨2階建て、屋上の海抜12.5メートル、震災後に建てられたばかりだ。だが、日本海溝・千島海溝巨大地震の津波想定は市内で最大16.0メートルに達すると判明。タワーを使わないように市から言われ、「どこに逃げれば……」。

七十苅さんは「地域の高齢化も進み、東日本大震災の時のように迅速な避難ができない可能性もある」と不安を漏らす。久慈市消防防災課の担当者は「これほどの高さは想定外。タワーをかさ上げするのは、強度や予算からも難しい」と説明する。

巨大地震で津波の高さが最大26.1メートルに達するとされた青森県八戸市。避難訓練などを実施してきた江陽地区自主防災会の田辺隆会長は、想定に一度は絶望したという。

だが、「対策で死者は8割減らせる」という政府の指摘も知り、「行動するしかない」と決意。高い場所の商業施設などに対し、避難所として使えるよう交渉を始めた。市も後押しする構えだ。

東日本大震災の後、政府は「想定外は許されない」として、南海トラフ巨大地震でも最大級の津波や被害を公表した。

和歌山県の試算で最悪約2千人が死亡するとされた太地町の担当者は「最初に聞いた時は、とんでもない数字と思ったが、できることをやるしかない」。高台の宿泊施設を買い取って避難先にしたり、避難所として駅を使えるようにしたり、取り組みを続けている。

東北大の今村文彦教授(津波工学)は「震災から11年が経過し、『もう大丈夫』という過信が怖い。立派な防潮堤もできたが、100パーセントの安全はない」と指摘。「避難訓練や対策を重ねて、地域で課題を洗い出してほしい。南海トラフ地震が予想される地域との学び合いも大切だ」と訴えている。〔共同〕

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