「石綿文書廃棄は違法」、遺族が国を提訴 神戸地裁
アスベスト(石綿)による健康被害で死亡した兵庫県三木市の男性の遺族(47)が、関連文書を労働基準監督署に誤って廃棄されたのは不当として、国に約300万円の損害賠償を求めて15日、神戸地裁に提訴した。
訴状などによると、男性は建築業務で建材に含まれていた石綿の粉じんを吸引。2003年に中皮腫で死亡し、08年に加古川労基署に労災認定された。昨年遺族が労災記録を情報開示請求し文書の開示を受けたところ、兵庫労働局から説明はなかったが、弁護側の調査で誤廃棄が判明した。
遺族は今年3月、神戸市の建材メーカーに損害賠償を求め大阪地裁に提訴。文書の誤廃棄により原因の特定が困難になる恐れがあり、永久保存とされている労災記録の廃棄や、開示の際に誤廃棄を説明しなかったことは違法と主張している。
石綿関連文書の誤廃棄は全国の労基署などで相次ぎ、15年の厚生労働省の調査によると約6万件に上るという。
遺族側代理人の谷真介弁護士は提訴後に記者会見し「石綿労災記録の重要性が深く認知され、厳重な取り扱いが徹底されるよう求めていきたい」と訴訟の意義を述べた。
遺族は「石綿被害者へ追い打ちのように、国が文書を廃棄していたことは許せない」とのコメントを出した。〔共同〕