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Jリーグ空白県、関西に3 野球盛ん、スポンサーに課題

とことん調査隊

セレッソ大阪やヴィッセル神戸など、実力あるJリーグクラブを擁する関西。世界的スターのアンドレス・イニエスタ、元日本代表の大久保嘉人の活躍など話題にも事欠かない。一方で、クラブは関西に4つ。全国57クラブの1割に満たない。他の地域に後れをとるのは、なぜだろう。

Jリーグはプロ化で日本サッカーのレベルを向上させようと1991年に設立。ガンバ大阪は発足時の「オリジナル10」の一員だ。その後、クラブを拡大。2014年にJ1からJ3の3部制となり、57クラブになった。

関東には17クラブ。関西はヴィッセル神戸以来、新規加盟が20年以上ない。九州(9)や東北(6)より少なく、人口規模の小さい四国(4)や中国(4)と変わらない。全国7県のJリーグクラブ「空白県」の3県が集中する。

3県は滋賀、奈良、和歌山。関西サッカー協会専務理事の田中克紀氏は「母体となる企業チームが無かったのが痛い」と語る。Jリーグ加盟には、下部リーグの成績だけでなく年間1.5億円の事業収入や普及活動なども求められる。母体企業が大口のスポンサーとなり、クラブの経営を支えるなら心強い。地元自治体と関係を築けば、スタジアムの確保もスムーズだ。

しかし、この3県の上場企業は滋賀が最も多く11社。そもそもサッカーチームを持つ企業は限られそうだ。有力企業に聞いても「チームがない」(日本電気硝子と平和堂)。滋賀銀行は県の社会人リーグ1部に所属するサッカー部があるが、「あくまで部活動」(滋賀銀行)という。

ただ、本社から離れた地方の工場や事業所のチームが成長する場合もある。J3のロアッソ熊本は、電電公社(現・NTT)の熊本電話局管内の同好会を源流に持つ。

「和歌山アントラーズが生まれていたかも」。田中氏は悔しがる。Jリーグで最多優勝回数を誇る鹿島アントラーズは、住友金属工業(現・日本製鉄)で1947年に生まれた大阪の同好会が始まり。同社では和歌山製鉄所(和歌山市)が一大拠点だったが、鹿島製鉄所(茨城県)が稼働すると、チームも関西を後にした。

その後、鉄鋼業も衰退。人口減でサポーター獲得も難しくなり、さらにクラブが生まれにくくなった。田中氏は「行政がサッカーを街の活性化の手段として捉えなければ状況は変わらない」と話す。実際、Jリーグが地方経済を潤す例はある。現在はJ2の長野県の松本山雅FCは同県への経済波及効果が19年に60億円を超えたようだ。

3県にもJリーグ入りが現実味を帯びるチームもある。奈良県全域をホームタウンとする奈良クラブだ。アマチュア最高峰の日本フットボールリーグ(JFL)で戦っている。ただ、サポーター獲得には苦戦。新型コロナウイルス感染拡大前の19年のホームゲームの平均入場者数は1500人弱で、J3全体の約2400人を大きく下回る。収益基盤の安定が課題だ。

広報担当の山川達也氏は「野球文化やのんびりとした県民性が一因」と話す。確かに高校スポーツでは智弁学園や天理が甲子園などで活躍する。そのなかで毎週のように週末にサッカーの応援に熱を上げるサポーターを増やすのは容易ではない。

奈良クラブはサポーターがクラブ経営に関わる制度の導入検討や、企業の経営者向けの地域振興に関する勉強会の開催などを通じて、ファンを広げる考えだ。

ほかにも、MIOびわこ滋賀やアルテリーヴォ和歌山のようにJリーグを目指すチームは少なくない。多くのスポンサーとサポーターを巻き込み、「空白県」を返上できるか。ピッチ内にとどまらない熱い戦いは続く。(苅野聡祐)

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