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京都競馬場、改修でどうなる 人にも馬にも優しい空間に

とことん調査隊

例年、天皇賞・春やクラシック三冠の最終戦、菊花賞など、伝統ある大レースが実施される日本中央競馬会(JRA)の京都競馬場(京都市伏見区)が改修工事に入っている。2023年春まで開催を休止。スタンドの建て替えなどを進める。現在、工事はどの程度進み、完成後はどう生まれ変わるのか。工事中の競馬場を取材して探った。

クレーンが林立し、大きな重機が至る所で動きまわる。巨大だった1980年建築の旧スタンドは、わずかな部分だけが骨組みをさらけ出すように、たたずんでいた。

取材に訪れた6月初めの時点で、旧スタンドの解体は9割ほど終わっていた。工事現場の担当者は「日本で2番目に大きな型の解体用重機が5台入っている。これだけ投入されている現場はなかなかない」と話す。がれきを積み込むショベルも巨大。2杯分で10㌧のダンプカーが満載になるという。いかに工事の規模が大きいかがわかる。

一方、馬場に目を向けると芝コースの部分が、路盤改修のために掘り起こされ、その土が場内に積み上げられていた。芝コースは55㌢㍍掘り下げ、砂利、山砂、改良材を含んだ砂の3つの層をつくった上に芝を張る。改修で馬の脚への負担が小さくなる。

工事はスタンド、馬場、厩舎地区の3つの工区で行われている。旧スタンドの解体は6月中に終了。その後、新スタンドの建設工事に移る。

馬場の路盤改修は芝が根付くのに時間がかかる芝コースから工事を開始。2022年夏までに完了し、その後、ダートコースの作業に入る。厩舎地区では出走馬が滞在する厩舎などを更新する。3つの工区を合わせた総工費は760億円以上にも上る。

完成後はどんな競馬場に生まれ変わるのか。旧スタンドは7階建てで延べ床面積6万6千平方㍍だったが、新スタンドは6階建て6万1千平方㍍に少し規模が小さくなる。

ただ、「小さくなったとは感じられないと思う」と京都競馬場総務課長補佐の塩原圭樹さん。高さは新旧ともに34㍍。新スタンドは階数が減るため、天井が高くなる。その分、ゆったりと感じられる。

加えて「バックヤードを小さくして、ファンのエリアを広くとる」(塩原さん)。ネット投票の増加やキャッシュレス投票機の設置加速で、現金管理に必要な人が減り、バックヤード縮小が可能になった。実際、新型コロナウイルス感染拡大で無観客が続いた20年は売り上げの9割が現金以外の投票。通常開催だった19年も7割を占めた。

スタンド内の座席数や配置は現在検討中。コロナの影響もあり「ひとつひとつの席の間隔などは確実に広くなる」と塩原さんは話す。快適な空間になりそうだ。

中央競馬の全10競馬場のうち京都だけだったユニークな円形のパドックを他と同じ楕円形に変更する。「円形だと馬の歩様が見づらいという声もあった」(塩原さん)ためだ。寂しさもあるが、楕円にすることで直線部分の歩様が見やすくなる利点はある。

そもそもなぜ京都だけ円形だったのか。円形となったのは現在取り壊し中のスタンドの1代前、1938年築のスタンドから。設計を担当した建築家の安井武雄は「観覧者が勝馬投票券を買う前に下見馬場へ出場馬を見に出る傾向が最近非常に多くなったことを考慮」(「建築と社会」38年11月号)し、パドックに馬蹄(てい)形(U字形)の観覧席を設けた。パドック内の馬場を観覧席に沿う形でつくったため、円形となった。

今回、スタンドの設計を担当するのは安井武雄が創業した安井建築設計事務所(大阪市)。施工は大林組と、38年のスタンド建設時と同じタッグだ。新スタンドも新たな伝統を生み出すのだろう。(関根慶太郎)

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