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関西の創薬スタートアップ、目線を世界に 清水速水さん

関西のミカタ 大阪大学ベンチャーキャピタル代表

■運営するファンドを通じて大学発スタートアップに投資し、事業化を後押しする大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC)。伊藤忠商事でライフサイエンス関連の新事業の立ち上げを担当し、2020年からOUVCの代表を務める清水速水さん(56)は、創薬の分野では関西の新興企業も東京勢に負けていないと評価する。

電子商取引(EC)などCtoC(個人間取引)の領域などでは情報の発信や人材の集積の点で東京のスタートアップの方が有利だが、創薬やライフサイエンスでは関西も遜色ない。OUVCのこれまでの投資先のうち、過半数は創薬や医療サービスの企業が占める。

大阪には製薬企業が軒を連ねる道修町があり、神戸は医療産業都市を標榜している。京都にはiPS細胞の研究拠点がある。関連するスタートアップが育つ土壌があるほか、企業との提携もしやすい。以前は阪大と京大で1番を競い合う風潮もあったが、同じく大学の研究成果の実用化を目指す京都大学イノベーションキャピタルとも連携が進む。関西経済連合会も、加盟企業と大学発スタートアップとの交流に積極的だ。投資先では阪大発の創薬スタートアップ、ファンペップクリングルファーマなどの上場が続いている。

■海外で存在感を示す国内スタートアップはまだ少ない。関西から世界に目を向ける起業家の育成を目指す。

伊藤忠でバイオとデジタルを融合した事業を立ち上げようとしていた00年ごろ、視察でIT(情報技術)産業が集積するイスラエルを訪れた。技術はまだ粗削りの部分もあった。しかし、当時から現地の企業は国内市場は眼中になく、欧米でどう成功するかを考えていた。その本気度が海外の投資家からの評価につながる。最近では中国の新興企業も米ナスダック上場を見据えるようになっている。関西でも海外志向の起業家が増え、「第二のイスラエル」になるのが理想だ。

創薬ビジネスを手掛ける場合、国内でも海外でも開発の仕方やマーケットは大きく変わらないだろう。日本でベースをつくれれば、世界を目指せる。まだ我々の経験値も少ないが、海外事業を手掛ける関西企業との提携のお膳立てや海外のVCとの協業によって支援したい。

製薬業界では遺伝子治療や核酸医薬といった新しいモダリティ(治療手段)が増える。大手企業も全てを一から自社でまかなうのではなく、足りない部分は外部と連携して開発する動きが加速してきた。米国では良い新興企業があれば、すぐにM&A(合併・買収)の対象になっている。創薬スタートアップの存在感はさらに増すはずだ。

■力を入れるのがインターンの受け入れや交流会の開催など、起業に興味を持つ学生を増やす草の根の取り組みだ。

私も伊藤忠の社内ベンチャーのような形でバイオや医療系の複数の会社を興した。正直に言うと、つくっただけで結果的に清算したこともある。ただ、失敗もノウハウとして自分の糧となっている。今は起業して仮にうまくいかなくても、次のチャンスがいくらでもある時代だ。阪大を見ているとまだまだ大企業志向の学生も多いが、選択肢を広く持ってほしい。

大阪での仕事は、塩野義製薬や大日本製薬(現・大日本住友製薬)など在阪4社のゲノム解析事業に携わったのが最初だ。それから約20年がたったが、関西にはそもそもサントリーの「やってみなはれ」精神のように挑戦を評価し失敗を受け入れる土壌があると感じる。加えて関西人は、ここぞという時の瞬発力があるように思う。ポテンシャルの高さが成果につながるように、後押しを続けていく。(聞き手は苅野聡祐)

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