関西財界セミナー開幕 万博契機に「イノベーションを」

関西の企業経営者らが経済や社会課題など幅広いテーマを話し合う第61回関西財界セミナー(関西経済同友会、関西経済連合会が主催)が9日、国立京都国際会館(京都市)で開幕した。地政学リスクの高まり、環境・エネルギー問題など課題が山積するなかで、成長に向けた革新力をどう取り戻すかなどについて3年ぶりに対面で議論した。
今回のテーマは「変動する世界、日本の針路」で、同日は約510人が参加した。ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立などの地政学リスクをにらみ、企業経営を取り巻く国際情勢をテーマにした分科会では、議長を務めたパナソニックホールディングス(HD)の佐藤基嗣副社長が「パナソニックHDにとって米国、中国ともに重要な成長市場であり、難しい対応を求められている」と説明。「生産拠点が中国に集中しており、中長期的視点でグローバルな生産体制を点検・再構築している。家電については中国での地産地消も検討する必要がある」と話した。
中国依存度が高く、海外売上高比率も高まっている関西企業は一層の対応が求められる。東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授は「企業も地政学リスクに備えた情報収集が必要であり、サプライズが来たときの対応力が求められる」と指摘した。
エネルギーの安定調達と脱炭素の取り組みをどう進めていくかも重要だ。ダイキン工業の十河政則社長兼最高経営責任者(CEO)は「(温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラルの実現は、我々の世代のミッションだ」と話し、その達成に向けた研究・投資を呼び込む必要性を強調した。

経済の地盤沈下が進み、関西のGRP(域内総生産)の全国シェアはおよそ半世紀前の20%ほどから、15%程度まで下がっている。起爆剤として期待されるのが2025年国際博覧会(大阪・関西万博)のような大型プロジェクトや再開発などを通じたイノベーションだ。関経連の松本正義会長は「関西は万博を起点に、国内外から呼び込んだスタートアップが成長できる拠点となる必要がある」と述べた。
関西には有力大学も多いが、三菱UFJ銀行の堀直樹会長は「オープンイノベーションの拠点としてまだ十分ではなく、発展途上だ」と述べた。大手監査法人トーマツの黒田雅美パートナーは「大学の研究シーズをいかに事業に落とし込むかが課題だ」と指摘した。
関西にも起業家が集積する生態系(エコシステム)づくりを急ぐ必要があるという声のほか、「ミレニアル世代やZ世代など、『ゼロ』から『イチ』を生み出すことにたけた人材を取締役にすれば、イノベーションを生み出すカギになる」(農業支援アプリを開発するサグリの坪井俊輔CEO)という意見もあった。
10日も5つの分科会での議論が続く。23年「関西財界セミナー賞」の贈呈式も予定されている。