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職人に定年なし、広野鉄工所 部下の技術習得で考課判断

はたらく

広野鉄工所では職人技の継承へ、ベテランが若手技術者に工作機械を操るノウハウを実地で伝授する(大阪府岸和田市)

大阪府岸和田市の丘陵地帯にある工業団地の一角。若手社員が工作機械の作業台をのぞき込み、寄り添うベテラン技術者が指さしつつ何かを伝える。若手がうなずき、次の作業に移る。金属加工中堅の広野鉄工所の本社工場では、日々の作業の中で着実に技術が受け継がれている。

同社は金属の切削や研磨など精密加工を得意としており、三百数十台の機械を擁する工場でクボタの農機具エンジン部品など約800品目を生産している。こうした少量多品種生産は「高度な職人技があってこそ」と語る広野幸誠社長が従業員一人ひとりに求める姿は、複数の機械を使いこなす「プロフェッショナルな多能工」だ。

部課長には「部下の技術習得」を考課基準に盛り込み、一定水準をクリアするため先生役を任じている。「どう教えたらいいのか考えることで、技術への理解が深まる」(広野社長)との考えからで、工場内では管理職の中堅技術者がベテランに機械操作などの教え方を尋ねている姿をみかけることもあるという。

腕に覚えのある技術者には事実上、定年がない。60歳で退職金が支給され、その後も同じ給与水準で働き続けることができる。現在、79歳を筆頭に60歳超は15人。昨年、84歳の大ベテランが退職した。この制度、昨今の定年延長への対応などではない。実に四半世紀に及ぶ歴史がある。

ベテランから中堅、若手へと技術の伝承を通じて広がるコミュニケーションの輪を一層、深めているのが、食堂での「席替え」だ。工場の2階にある食堂には、名札が付いた椅子が並ぶ。昼食時の「指定席」で、若手と役員でも半年間は隣同士で食事をする。「様々な部署、役職の人との交流が生むメリットは大きい」と広野幸一郎取締役。椅子は入社時に支給され、退職時には花束とともに手渡される。

同社が同府泉大津市の臨海工業地帯からこの地に移転したのは2017年。津波などの自然災害から従業員を守るすべを探っていた広野社長は、「工場ごと避難することにした」。宇都宮工場(宇都宮市)を含め133人の従業員のなかには父の背中を追い、兄を慕って入社した者もいるという。「従業員が幸せでなければ、より良い製品を作り出すことはできない」。昨年、英字誌に載った広野社長の言葉だ。(高佐知宏)

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