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震災の教訓忘れず、次世代へ 阪神大震災27年で追悼

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6434人が亡くなった1995年の阪神大震災発生から17日で27年。神戸市など被災地の追悼行事は新型コロナウイルスの影響で前年に続き、感染対策を徹底しての開催となった。戦後初の大都市直下型地震では都市の災害への弱さが露呈、耐震化など震災に強い街づくりは、なお途上だ。首都直下地震などが予想される中、防災・減災に向けた取り組みに終わりはなく、教訓の次世代への継承が課題となる。

地震発生時刻の午前5時46分、神戸市中央区の東遊園地では、「1・17」「忘」の形に並べられた竹灯籠の周りで遺族らが黙とうをささげた。「忘」は公募で選ばれ、主催者側によると「忘れてはいけない」との思いだけではなく、「忘れてしまう」「忘れてしまいたい」などの声も反映されている。

追悼行事の実行委員会によると、午前7時現在で約4千人が参加。2021年と同様に、新型コロナ対策として分散して来場してもらうため、灯籠は16日夕から点灯された。

「当時を思い出す1年に1度の特別な日」。神戸市の山下准史さん(60)は震災で父や当時勤めていた小学校の児童4人が犠牲となり、母も体調を崩して間もなく亡くなった。早朝にそれぞれの名前が書かれた銘板の前に立ち、静かに祈りをささげた。

発生時刻に時報が鳴り響くと、慰霊のモニュメントに向かって手を合わせた。教壇に立っていたころは授業で両親や震災の話をし、教育委員会で勤務するようになってからは若手教員に防災教育の大切さを説いてきた。今年度で定年を迎えるが、「子どもの命を守っていきたい」との思いを新たにした。

市主催の追悼行事では、大阪府茨木市のシンガー・ソングライター、田代作人さん(37)が遺族代表として追悼の言葉を述べ、犠牲になった姉の西田瑞恵さん(当時17)をしのんだ。「最期と分かっていれば、もっと話したかった」と悔やみ、震災を歌で伝える活動を続ける決意を述べた。

兵庫県西宮市の西宮震災記念碑公園でも多くの市民らが集まり、献花台に花をささげた。母を亡くした同市の自営業の女性(72)は「昨年、母と同じ年齢を迎えた。年月がたっても気持ちを整理するのは難しく、いまだに亡くなったのを認めたくない」とつぶやいた。

阪神大震災は、被害が著しく大きい被災自治体や被災者への特別な支援が必要と認められる「激甚災害」に指定。兵庫県の政治・経済の中心、神戸市で住宅やビルなど多くの建物が崩壊し、高速道路が倒壊するなどインフラが打撃を受けた。兵庫県によると、県内の被害総額は9兆9千億円、復興の総事業費は被害総額を大きく上回る16兆3千億円が投じられた。県や神戸市などは多額の地方債を発行して復興のための財源を調達。いまだに返済は終わっておらず、財政運営の重荷となってきた。

一方で、発生から四半世紀以上が経過して復興は進み、次世代医療の研究から実用化までを担う「神戸医療産業都市」が1998年に始動。人工島のポートアイランドに21年11月時点で約380の研究所・病院・企業が立地し、再生医療などで地域産業への波及効果も出始めている。被災者の生活再建や産業再生を支援してきた公益財団法人「阪神・淡路大震災復興基金」の事業も20年度末で終了した。神戸市では中心部・三宮の再整備が進み出すなど、街のにぎわいや魅力の創出に軸足が移りつつある。

災害時に延焼の危険や避難の困難が予想される住宅密集地の解消は課題だ。震災では神戸市長田区の木造住宅密集地などで火災が発生して約7000棟が焼失し、国や自治体は建て替え促進策などを強化した。

国は12年に避難が特に難しい「著しく危険な密集市街地」を初めて公表。神戸市では約225ヘクタールが指定されたが、20年度末でなお約190ヘクタール残る。「地権者の高齢化などで建て替えや住み替えが進んでいない」(同市)。全国でも約2200ヘクタールが残っており、国交省の担当者は「最低限の安全を確保できていない状況で、早急に対策が必要だ」と危機感を募らせる。

遺族や被災者らの高齢化が進む中、懸念されるのは記憶の風化と教訓の継承の難しさだ。兵庫県内にある「災害復興住宅」で入居者に占める65歳以上の割合(高齢化率)は5割超(21年時点)と過去最多になっている。復興庁によると、東日本大震災の被災3県でも18年3月末時点で高齢化率は約4割。いずれも誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」が課題として浮かび、コミュニティーづくりが求められる。

新型コロナは教訓の継承にも影響を与えている。神戸市の市民団体「市民による追悼行事を考える会」によると、阪神大震災でも兵庫県内の追悼行事は15年には110件あったが、それ以降は担当者の高齢化や資金難でほぼ半減した。東北の被災3県では、震災遺構などを訪れる人が減少。津波で浸水した高校の旧校舎を整備した宮城県気仙沼市の「東日本大震災遺構・伝承館」では団体客のキャンセルなどが相次ぎ、21年度の来場者は12月時点で19年度の半分に届かない。

今後は学校での防災教育の充実など、次世代へ教訓を受け継いでいくことが欠かせない。追悼行事の中止や規模の縮小は東日本とも共通の課題として重くのしかかる。

震災を踏まえた防災・減災のノウハウは海外にも発信。国際協力機構関西センター(JICA関西)によると、海外の自治体関係者らを対象とした建造物の耐震化やハザードマップの作製、避難訓練の方法などを幅広く学ぶ「防災研修」には、これまで計約120カ国・地域から受け入れてきた。コロナ下で入国が難しくなったため、20年秋からはオンライン研修を本格的に始めた。

日本列島では21年7月の集中豪雨で静岡県熱海市で土石流が発生し、26人が死亡したほか、海外では同8月にカリブ海のハイチで巨大地震が発生し、2000人以上が死亡するなど、国内外で大規模災害は今なお頻発している。防災・減災への取り組みは日本だけではなく、国際社会の共通の課題と言える。

(佐野敦子、札内僚)

阪神大震災

1995年1月17日午前5時46分に発生。淡路島北部を震源とし、マグニチュード(M)7・3、神戸市などで震度7を観測した。6434人が死亡、4万3792人が負傷。家屋は約24万9千棟が全・半壊し、直接死の死因の多くを窒息や圧死が占めた。

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