立花隆さんの蔵書5万冊、遺志で古書店に譲渡

2021年4月に死去したジャーナリストで評論家の立花隆さんの5万冊を超える蔵書が、立花さんの遺志で古書店に譲渡されたことが12日までに分かった。妹で秘書だった菊入直代さん(77)に「『立花隆が持っていた本が欲しい人』でなく、本の内容そのものに興味がある人の手に渡るようにしてほしい」と言い残していた。
自身の名を冠した「文庫や記念館などの設立は絶対にしてほしくない」と厳命していたという。
「ネコビル」と呼ばれた東京都文京区の事務所は部屋と階段の壁面にびっしりと書棚が並んでいた。さらに周辺や大学に部屋を借り、書籍を保管していたこともあったという。蔵書を引き取った古書店は「単行本だけで約5万冊。新聞、雑誌、冊子などを合わせると膨大な点数になる」と話す。
立花さんは本に線を引き、付箋を貼り、ページを折って読むのが習慣。菊入さんが理由を尋ねると「その時間だけゆっくり読めるだろう」と答えたという。それには図書館の本ではなく、返却する必要のない古書店の本が適していた。
菊入さんは「兄は子どもの頃から古書店に通い、お金がない学生時代は、本はいつも古書店で買っていた。父親が書評新聞の仕事をした関係もあり、なじみ深い古書店に自分の本を任せたのはごく自然な発想と思います」と話している。
詩人の立原道造に関する蔵書は、長野県軽井沢町の軽井沢高原文庫に寄贈するなど、一部の書籍は関連する施設や研究者などに贈られた。〔共同〕