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技術駆使も戦争継承に壁 原爆目標、北九州市に資料館

1945年8月8日の八幡大空襲と9日の原爆搭載機飛来を体験できる360度シアターのイメージ=共同

北九州市が来春開館を目指す平和資料館(仮称)を巡り、先端技術を用いた継承の手法に期待が高まる一方、戦争体験者の相次ぐ死去で時代背景の確認が困難になるといった課題が浮上している。76年前、米軍が広島に次ぐ原爆投下目標とし、空襲被害も甚大だった北九州。開館準備に携わる長崎原爆犠牲者の遺族は「可能なうちに証言を聞き取ることが重要だ」と話す。

北九州市によると、資料館の建物は、原爆投下目標だったとされる西日本最大の兵器工場「小倉陸軍造兵廠(ぞうへいしょう)」跡地の勝山公園(小倉北区)に今年度末をめどに完成する。展示は米国立公文書館で入手した戦中戦後の市内の写真と映像の複製、空襲被害や「原子爆弾と小倉」などを予定する。

壁面に投影したキーワードに触れると証言が浮かび上がる映像装置のイメージ=共同

若い世代に関心を高めてもらおうと新しい技術も取り入れる。1945年8月6日の広島原爆の2日後、約2500人の死傷者が出た8日の八幡大空襲と、翌9日の原爆搭載機飛来の展示は、円柱状の建物に設ける360度シアターを使用。臨場感あふれる映像や音声を体験することができるという。壁面に投映したキーワードに触れると、証言が浮かび上がる映像装置の導入も計画する。

市平和資料館担当課の田爪康隆課長(52)は「五感を通じて心に残る体験を提供したい」と狙いを語る。一方、戦争体験者の減少に伴う壁にも直面。「戦時下の市民の暮らしなどを調査した際、証言集めに苦労した」

米側の資料などを分析した長崎原爆戦災史や北九州市史によると、軍事物資の生産拠点だった北九州は44年6月16日、米B29爆撃機による日本本土最初の空襲を受けた。米国は翌45年4月に原爆投下目標地の選定を始め、東京湾や名古屋、京都、小倉など広島と長崎を含む17地域を列挙した。

インタビューに応じる資料館開設準備懇話会メンバーの作家後藤みな子さん=共同

7月25日の原爆投下命令書では広島、小倉、新潟、長崎の4都市となり、8月に新潟を除外。6日の広島への原爆投下後、9日にはB29「ボックスカー」がプルトニウム型原爆「ファットマン」を搭載し、小倉の上空に到達した。しかし、視界が悪かったため旋回を繰り返した後、直線距離で約155キロ離れた長崎へ飛行し、投下した。

資料館開設準備懇話会メンバーの作家、後藤みな子さん(84)=北九州市=は福岡県に疎開中、学徒動員で長崎に残った兄が原爆の犠牲に。「長崎のことを忘れたい」と結婚を機に上京したが、体験に基づき、原爆後の家族を題材にした小説を書いた。「当時を記憶する人の多くは90歳を超えた。生の声を聞けるうちに証言者を探し出し、語り継ぐ人を育てることが重要だ」と指摘している。〔共同〕

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