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「知らぬ間敗訴」どう防ぐ? 送達制度悪用し欠席裁判

相手方に気付かれないよう提訴して欠席裁判で勝ち、預金を差し押さえた男(39)に、大分地裁は3月、有印私文書偽造・同行使などの罪で有罪判決を言い渡した。相手方が故意に訴状を受け取らない場合に、裁判所から訴状を発送した時点で届いたとみなす「書留郵便に付する送達」制度を悪用し「知らぬ間敗訴」とも呼ばれる。裁判制度の隙を突いた犯罪は過去にもあり、どう防ぐかが課題だ。

公判のやりとりなどによると、男は以前働いた飲食店の経営者を相手取り、未払い賃金があるなどとして各地の簡裁に提訴。経営者の住所に虚偽を書いていたため訴状は届かなかったが「電気メーターが動いており、住んでいると考えられる」などとうその報告書を提出。簡裁は、経営者があえて訴状を受け取っていないと判断し、送達制度で訴状を同じ住所に送って審理を始めた。経営者の反論がないまま男の主張を認め、預金が差し押さえられていた。

男は以前、裁判を起こそうとして相手方に訴状が届かなかったことがあり、弁護士に相談して送達制度を知ったという。国の新型コロナウイルス対策の給付金約685万円をだまし取った罪と合わせ懲役4年6月の判決を受け、確定した。

悪用された送達制度。相手方が居留守を使うなどして故意に訴状を受け取らない場合に裁判を起こせなくなる原告の保護が目的だ。関係者によると、原則相手方の住民票が必要とされるが、今回のようになくても利用できる場合がある。実際に相手方を裁判所職員が訪れ、居住実態を確認することはない。裁判所が住所を調べることは、原告・被告の公平性を保つ上で難しいためだという。

政府は今国会に民事訴訟法改正案を提出。オンラインで裁判手続きを可能にすることを目指すが、送達制度は今後も維持される。改正案策定に携わった大坪和敏弁護士は「送達制度に欠陥があるとは言えない。当事者情報をより丁寧に確認するなど、裁判所の運用で防ぐしかない」と話す。

裁判制度の悪用は過去にもあった。2002年、兵庫県西宮市の会社役員らが「支払督促制度」で架空の債権があると申し立てた。申し立てに基づき裁判所が債務者に督促状を送り、異議がなければ支払いを命じる制度だ。役員らは相手方の家の前で本人に成り済まして督促状を受領。危うく架空の債務が確定するところだった。この手口はその後も確認され、裁判所などが注意を呼びかけている。

慶応大の亀井源太郎教授(刑法)は、こうした手口は財産の不法取得目的だが、詐欺や窃盗などに該当せず、より刑が軽い文書偽造の罪で処罰されたと指摘。「司法制度の悪用そのものを罰する立法を検討する余地がある」と話している。〔共同〕

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