クボタ、次世代農機開発へ日米で大型拠点 世界首位追う

クボタが研究開発への投資を国内外で加速している。米国のジョージア州で農機などを開発する同社最大の拠点を4月に稼働させた。日本でも過去最高額を投じて拠点を建設中だ。競合の米ディアは農機の自動運転などで先行しており、農業の高度化を急ぐ。
ジョージア州では米国で需要が見込める芝刈り機に加え、資材の運搬などに使う四輪車を開発する。投資額は約99億円で、敷地面積は120万平方メートルと、タイやフランスの開発拠点を上回り同社で最大だ。開発中の製品を素早く試す試験場を確保するため広大な土地を確保した。
現地で試験場を借りていたものの「時間的な制約もあり、すぐに研究できなかった」(機械事業を統括する渡辺大取締役)。開発人員の確保も急ぐ。現地の技術者を中心に70人程度でスタートし、2027年までに3倍弱の200人に増やす予定だ。製品の改良サイクルを速める。

クボタは海外売上高比率が高い。21年12月期の機械部門の海外売上高は約1兆5000億円で全体の83%を占めた。成長性も高い。増収率は国内の前の期比6%に対して海外は約28%だった。重点市場の北米で研究開発体制を整える。
テキサス州にも1月に研究拠点を開設した。出資する米スタートアップなどの人員を集め、ブドウ農場で使用する農業ロボットなどの開発を始めた。今後は人工知能(AI)を活用したデータ農業にも取り組む構えだ。
クボタは19年にスタートアップとの協業を加速するためイノベーションセンターを設立した。イノベーションセンターの所長も務める渡辺取締役は「クボタは基本的に自社開発がメインだが、自社で持っていない技術もある。M&A(合併・買収)も候補の一つになる」と話す。
農業の担い手が減少するなか、自動運転による農業の効率化は喫緊の課題だ。国内では7月めどに堺市に研究開発拠点が完成する予定だ。投資額は839億円を見込む。試験設備を整備し、自動運転農機などを開発する。
競合は先を行く。ディアはカメラとAIを活用して全方位の障害物を検知できる自動運転トラクターを22年後半にも投入する方針だ。
クボタは17年に自動運転のトラクターを投入したものの、測位衛星システム(GNSS)などを用いた自動操縦にとどまる。AIカメラという「目」を持ち、自ら考えながら動く農機の実現はまだ先だ。
研究開発担当の木村浩人取締役は「最近は(市場変化の)スピードが特に速くなった。これまでの農機や農業の形のままだと、数十年先にクボタは無くなっている」と話す。最新技術の実用化が今後のカギを握る。
(仲井成志)

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