/

物語にオチ、京都人の気質 綿矢りささん

関西のミカタ 作家

わたや・りさ 1984年滋賀県生まれ、京都市出身。高校在学中の2001年に「インストール」で文芸賞を受賞しデビュー。早稲田大学在学中の04年、「蹴りたい背中」により芥川賞を受賞。他の著書に「かわいそうだね?」(大江健三郎賞受賞)など=写真は新潮社提供

■17歳で作家デビューし、最年少の19歳で芥川賞を受賞した綿矢りささん(37)。村上春樹氏の小説に憧れ、大学進学を機に居心地のいい京都を離れて上京した。

京都の街では昔から積み重ねられてきた人間の喜怒哀楽が感じられる。日中は観光客でにぎわっていた神社や古い町家も、夜になるとシンとする。皆が寝静まった街を歩くのは子どもの頃は何だか怖かったが、歴史のある街だと実感する瞬間だった。世界中の人が歴史を見に来るので古いものを大切にする意識があり、それが保守的な気質につながっているのかもしれない。

豊かな自然が好きで、鴨川や嵐山にはよく行った。両親に大原へ連れて行ってもらったことも覚えている。自然があるところへ簡単に行ける環境は貴重だったと東京に来てから分かった。ただの自然ではなく人の手でよく手入れされたものであることも京都に住んでいたときは気がつかなかった。

一度住むと外に出たいという気持ちが湧きにくくなる「京都の魔法」がある。時の流れがゆっくりで居心地がいいし、盆地なので物理的にも山に囲まれている。でも自分は大学進学を機に京都を出た。村上春樹さんの本が好きで、作品によく登場する東京の地名や早稲田大学に憧れていた。小説のなかに出てくる東京の街を知りたいと思った。

成人の日は故郷の京都市で迎えた

■東京では情報量の多さや街の華やかさに疲れ、京都が恋しくなることもあったと振り返る。

上京して東京の都会っぷりに驚いた。色々な人種やファッション、顔つきの人がいた。ビルも高いし看板も多い。自分には情報過多で、都会の華やかさに疲れてくると故郷ののんびりさが恋しくなった。ただ京都にいると眠たくなってきて逆に東京へ行きたくなり、20歳代は東京と京都を行き来する生活が続いた。

街の風景から小説の着想を得ることがある。東京の池袋、京都の大原、無名の神社、個人経営のお好み焼き屋……。きらびやかなところより、疲れが街角に透けて見えるような風景が好きだ。主人公がそこで人と会話している様子を書けたらいいなと思う。

小説は自分の内面を見て書いている。他人を観察するのはあまり得意ではない。楽しいときもどこかで違うことを考えるなど、自分は複数の感情が湧き上がることが多い。それを掘り下げて複数の登場人物の人格に振り分けている。

■ラストにオチのある作品が多いのは、会話にオチを求める京都人の気質が影響しているという。

東京に住んでいて思うのは、東京は考えてから話す人が多いが、京都は会話のテンポが速い。おっとり話すイメージとは裏腹にボケと突っ込みの掛け合いは盛んで笑いを好む。会話にオチが求められることもあり、小説にもオチが必要だと思っていた時期が長くあった。オチがないのに物語を書いていると誰かに怒られるような気がしていたのは、京都人の気質が影響していると思う。

京都の人はできるだけ遠回しな言い回しで嫌みをいう「いけず」なイメージがあるとよくいわれる。自分は「いけず」はあかんなと思う。小説や会話では、できるだけ使わないようにしている。京都の「いけず」なイメージとは違う作風でいたい。

観光地の京都は基本的に受け身の街だ。小学生のときは観光客はそこまでいなかったが、次第に増えていった。にぎやかになった半面、バスが混雑するなど住民が振り回されることもあったと思う。今回も新型コロナウイルス禍でがらりと状況が変わった。変化に対応するのは大変だと思うが、故郷の皆さんがいい形で新しい状況になじんでいけたらいいなと思う。(聞き手は佐藤諒)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン