尊氏や信長らの書状原本 京都・清水寺、天皇の綸旨も

清水寺(京都市東山区)は8日までに、境内にある成就院の書庫から足利尊氏や織田信長、豊臣秀吉らの書状の原本など194点の古文書を発見したと発表した。このうち53点は新発見。尊氏らの文書は写しがあり、内容は知られていたが、原本は所在が分かっていなかった。歴代天皇の書状も見つかり、清水寺と歴代権力者との関係をひもとく貴重な手掛かりになるという。
大部分の文書は14世紀から19世紀までの500年にわたるものだった。
194点のうち16点(15点は新発見)は室町~江戸時代の天皇11人が、成就院に宛てた書簡。側近が天皇の命令を書いた「綸旨(りんじ)」だった。後土御門天皇は、応仁の乱(1467~77年)で焼失した清水寺の修繕を進めるよう指示していた。成就院が、修繕のための寄付集めを、朝廷の権威を得て進めていたことが分かるという。

尊氏が清水寺に領地を寄進すると書いた1335年の文書は、直筆の署名「花押」入り。信長が1568年、足利義昭を奉じて上洛(じょうらく)した際に出した文書は清水寺境内での放火、殺生などを自身の陣営に禁止した内容で、寺が当時の権力者から保護してもらうために出してもらった書状という。
秀吉の書状には、母の病が清水寺の祈願で治り、その褒美にコメを贈ると記されている。成就院から浴衣を贈られたことに対する礼状もあった。
調査に携わった京都国立博物館の下坂守名誉館員は「足利尊氏らの書状の原本は、時代の息遣いが分かる重要な発見」と話した。清水寺は2020年6月から書庫を整理していた。〔共同〕