被爆2世の遺伝的影響巡る訴訟、賠償請求棄却 広島地裁
広島の被爆者を親に持つ「被爆2世」が、放射線の遺伝的影響による健康被害の可能性が否定できないのに国が援護を怠ったのは憲法違反だとして、広島県などに住む2世の28人が国に1人10万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、広島地裁は7日、2世の請求を棄却した。被爆者援護法が規定する被爆者と同等の立法措置を2世に講じないことは、不当な差別的取り扱いではなく、憲法に違反しないと判断した。原告側は控訴する方針。
同種訴訟の長崎地裁判決も昨年12月、原告の請求を棄却、違憲性を否定しており、被爆2世が相次いで敗訴した。
森実将人裁判長は判決理由で、被爆者援護法の援護対象は「原爆の放射線を直接被ばくした可能性がある者」と指摘。被爆2世に関し、放射線の影響を受けて健康被害が生じる可能性があるという部分では被爆者と共通するが「科学的知見の有無や精度は質的に大きく異なる」とした。被爆者とは事実上の差異があり、同等の立法措置を講じないことが「法の下の平等」を定める憲法14条には反しないと認定した。
原告側は、これまでの科学研究では親の被爆が健康被害につながる可能性は否定されていないと主張。判決は、遺伝的影響による健康被害の可能性は「現在の科学的知見では明確に否定されていない」とした上で、遺伝的影響があることは「通説や有力な見解とは認められない」として原告側の主張を退けた。
被爆2世に関し、被爆地域に隣接する区域にいた「みなし被爆者」とも質的に異なると判断。戦争被害の援護の在り方は国会の裁量的権限に委ねられ、2世が健康不安に対する措置を国に求める権利が保障されるとは言えず、憲法13条にも違反しないと判断した。
国は両親か親のどちらかが被爆者で、広島では1946年6月1日以降、長崎では同4日以降に生まれた人を被爆2世としている。全国被爆二世団体連絡協議会によると被爆2世は全国に30万〜50万人いると推定される。〔共同〕