海の幸、電話販売トラブル 旅行代わりについ購入
海産物の電話勧誘販売を巡るトラブルが急増している。各地の窓口などに寄せられた相談件数が2021年度は5千件を超え、20年度の2倍以上になった。22年度も21年度を上回るペースだ。新型コロナウイルスの影響で社会全体が行動を制限されるなか、「経営が厳しい」などと同情を誘う手口が目立つ。中には旅行気分を味わおうと応じてしまうケースがあるとみられる。国民生活センターは不審な電話への注意を促している。

今年9月、関東地方に住む50代女性宅に海産物の販売業者を名乗る人物から電話がかかってきた。「コロナで商売が厳しい。助けてくれないか」。詰め合わせ商品の購入を持ち掛け、「サケ1匹とホッケ4枚、ウニやイカなどの瓶詰2本が入っている」という。
女性は断れず、約1万8千円で購入。後日、品物を届けに来た宅配業者に代金を支払って中身を確認したところ、瓶詰は説明通りだったが、サケは半身でホッケも1枚のみ。女性は不足分を追加で送ってもらおうと、業者に電話をかけたが連絡がとれなくなった。
国民生活センターによると、海産物の購入を巡るトラブル相談は17~20年度、年間約2千件で推移していたが、21年度は5194件。22年度は4~9月で2360件と、前年度同時期の1914件を上回る。
急増の要因は、悪質業者がコロナ禍に便乗して活動を活発化させたことがあるとみられる。コロナの影響による経営難をうたって勧誘する事例が多く、21年度で約3割を占めた。
被害者を年齢別でみると、7割以上が60歳以上。返金方法などを調べられず、泣き寝入りする高齢者も少なくないという。
同センターの担当者は「コロナの影響を受けた人は多く、善意につけこんでいる可能性がある。(外出自粛が続き)観光地などで地元名産の魚介類を手に入れる機会も減り、同情心に加え旅行気分を味わえると思って応じてしまうのだろう」と話す。
今後、冬にかけてズワイガニ・ホタテなどといった旬の海産物が出回る時期を迎え、被害がさらに膨らむ恐れもある。担当者は「不審な電話がかかってきたら、きっぱり断ること。代金を支払ってしまった場合でもあきらめずクーリングオフ(無条件の撤回・解除)などの活用を検討してほしい」としている。
クーリングオフ、一定期間内は契約解除可 メールもOK
消費者庁によると、虚偽説明に基づいて勧誘する行為は特定商取引法に違反する可能性がある。訪問販売や電話勧誘販売などの取引は消費者トラブルに発展するケースもあり、同法は事業者に対する規制やクーリングオフを定めている。
クーリングオフは契約後一定期間であれば、無条件で契約を解除できる制度。
電話勧誘販売の場合、契約書など法定書面を受け取った日を含め8日間以内であれば手続きが可能だ。代金支払い後も期間内は返金が義務付けられている。
契約書類にクーリングオフの記載がなかったり、書類自体を受領していなかったり不備があれば、期間をすぎても契約解除できる。
制度を利用する際、事業者側に書面で通知する必要があるが、今年6月から電子メールなどでもできるようになった。
事業者側が「通知が届いていない」などと反論することを想定し、書面(契約年月日や商品名、金額などを記載)のコピーやスマートフォンなどのスクリーンショット機能で記録を残すことが欠かせない。
事業者の連絡先が分からない場合は、配送業者に配送元の住所などを問い合わせる手段もある。
全国共通の「188」に電話すると、各地の消費生活相談窓口を案内してもらえるため、国民生活センターは積極的な相談を呼びかけている。
(北このみ)