ダイキンの4~9月、円安に頼らず増益 値上げ浸透
決算深読み
ダイキン工業が8日発表した2022年4~9月期の連結決算は純利益が前年同期比12%増の1563億円となり、4~9月期として過去最高を更新した。省エネ性能の高い機種を中心に空調機販売を伸ばしつつ他社に先行して値上げを浸透。円安に頼らず増益につなげた。23年3月期通期の純利益も2年連続で最高となる見通しだ。

年間配当は前期比20円増の220円と従来予想から20円引き上げた。4~9月期は売上高が前年同期比30%増の2兆197億円と同期間で初めて2兆円を超えた。営業利益は15%増の2216億円だった。
利益を最も押し上げたのは値上げだ。940億円の増益要因となった。機能を高めた新商品の投入時期を早めるなどして世界で4~5%の値上げを実施。前期に他社が半導体不足に見舞われて店頭への商品供給が細るなか、ダイキンは各国の工場で部品などを融通して店頭に供給を続けた。顧客との結びつきが強まり「製品値上げを受け入れてもらいやすくなっている」(幹部)。
値上げ浸透と販売増を両立できており、販売増は454億円の増益要因となった。米国では現地工場が順調に稼働し、省エネ性能の高い機種が好調だ。アジアでもインドやマレーシアで販売が急拡大した。欧州では脱ロシア産燃料の動きを受けて「ヒートポンプ暖房」が伸びている。
円安も追い風となり、180億円の増益要因となった。同社は対ドルで1円の円安が営業利益を18億円押し上げる。こうした増益要因で輸送費や原材料高などの減益要因(940億円)を吸収した。円安効果を除いても営業利益は前年同期比で6%増えており、円安頼みになっていない。
課題は生産体制の見直しだ。需要の伸びるインドネシアでは新工場を建設する方針。一方、国内では部品内製化や国内調達への切り替えを進めるほか、完成品の生産増も検討する。十河政則社長は日本の需要見通しなどによって「国内での新工場もあり得る」と話す。
23年3月期通期の売上高は前期比21%増の3兆7600億円、純利益は8%増の2350億円と8月の会社予想から引き上げた。米国では利上げにより住宅着工が伸び悩んでいる。空調機販売への影響について十河社長は「懸念を持っており、いち早く手を打っていく必要がある」と述べた。(岩戸寿、中村信平)