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パナソニック「競輪」に幸之助魂 ビジュアルで迫る現場

現場探究

(更新)

電動アシスト自転車で国内トップシェアを誇るパナソニック。実はバッテリーなしの競技車両も、ツール・ド・フランスの区間賞に輝いたことがある名門だ。フレームの長さやペダルの位置などを自由に変えられるオーダーメード品はプロ選手の支持が厚い。グループの柏原工場(大阪府柏原市)から出荷する年間1000台のうち半数は競輪選手からの注文だ。

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オーダーメードは個人の身長や体重、股下の長さなどを細かく聞き取ることから始まる。フレームでは長さは1ミリ、角度は1度単位で調整。学生時代はプロ選手を目指していたパナソニックサイクルテック(同市)の古谷勇輝さんによると、同じ体格でも筋肉の付き方や戦法によって最適な設計は変わるという。

例えば、「追い込み型」の選手は、サドル角度を前のめりにすることで「最後の直線で太ももの前側の筋肉を使って思い切りペダルを押し込める」(古谷さん)。反対に「逃げ切り型」の選手はサドルを寝かしつけ気味にすることで「序盤からハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)を持続的に使える」といった具合だ。

図面を見ながら30~60分程度のやりとりを数回繰り返し、納得のデザインを見つけていく。「プロの世界はコンマ数秒が勝負。選手は生活がかかっているので妥協はできない」

工場内で適切な長さに切断されたクロムモリブデン鋼(クロモリ)製のパイプは、熟練社員が溶接する。「ラグ」と呼ぶ接合部品とパイプの隙間に黄銅を溶け込ませる工法で、バーナーで熱しすぎるとクロモリ特有のしなやかさや強度が失われてしまう。「平面なら楽だが、小円形のクロモリのパイプに均等に温度を伝えるのが難しい」と溶接担当の井上裕次さん。

職人技は塗装でも続く。フレームは約40色から選べ、部位ごとに色や模様を変えられる。無数の組み合わせに対応するため、エアスプレーガンを使い手作業で塗り分けている。

2~3分の間に噴出加減を調整する手元のレバーを150回ほど微調整しながら塗装していく。フレームの各部に均一に散布するには高い技術が欠かせず、塗装の厚みのムラは5~10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルに収まるという。

ミラー塗装など特別色になると、乾燥を含めて50超の工程が必要なものもある。新色開発も手掛ける塗装担当の宮脇慎さんは「常に依頼者に後ろから見られている気持ちで塗っている」と緊張感を保つ。

完成したフレームの大半は車輪やギアは付けず、選手のもとに届ける。1センチ刻みで調整できる一般向けのオーダーメード車も競輪向けと同じ流れでつくる。

パナソニックが自転車の販売に乗り出したのは松下電器産業時代の1951年。創業者の松下幸之助氏が10~15歳の時に修業を積んだ大阪・船場の自転車店での経験に由来する。同氏にとって自転車店での修業は社史で「経営の原点」と語られるほどだ。客の悩みを聞き、ものづくり・サービスで応える――。創業者の思いは今も受け継がれている。

(平嶋健人)

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