/

兵庫・豊岡で市長交代 どうなる演劇のまちづくり

登庁初日に記者会見する豊岡市の関貫市長(6日、兵庫県豊岡市)

兵庫県豊岡市で4月25日に投開票した市長選で、新人の関貫久仁郎氏が現職の中貝宗治氏を破って当選した。豊岡市長を4期16年務めた中貝氏は演劇によるまちづくりや男女格差の解消など特色ある地域振興策で全国の注目を集めたが、有権者は中貝市政を真っ向から批判した関貫氏を新トップに選んだ。

6日に初登庁した関貫氏は緊張の面持ちで並ぶ100人超の幹部職員らを前に「極端な変化を皆さんに押しつけることはない」とあいさつした。だが式の後の記者会見では「演劇自体は否定しないが市の関わり合い方を考える」と述べるなど中貝市政からの転換を強く示唆した。

日本海側に面した豊岡市は長年、人口減少と経済の停滞に苦しんできた。中貝氏は2001年に旧・豊岡市長に就き、05年に6市町合併で誕生した現・豊岡市の市長を4期連続で担った。この間に打ち出したのが演劇によるまちづくりと男女格差の解消だった。

演劇によるまちづくりの象徴として4月に芸術文化観光専門職大学が開学した(4月1日、兵庫県豊岡市)

若年層の流出の真因を地域の根深い男女格差に求め、3月には中長期の格差解消戦略を策定した。交流人口を増やす手段として演劇に着目し、20年に豊岡演劇祭をスタートしたほか4月には国公立で初めて本格的に演劇を学べる県立の「芸術文化観光専門職大学」を誘致・開学した。

これに対して関貫氏は市長選で「演劇によるまちづくりを急いで進めることに市民の理解が十分に得られていない」「子育て支援の充実などやるべきことが他にある」など中貝氏の看板施策を痛烈に批判。0~3歳児の医療費無料化など「主人公は市民」をスローガンに対抗した。

中貝氏有利と目された市長選だが軍配は関貫氏に。県立大学の開学で演劇のまちづくりを後押しした兵庫県の井戸敏三知事も「(中貝氏の敗北を)想像していなかったし、残念に思う」と驚きを口にした。同時に「選挙の結果をもって(演劇のまちが)全否定されたと受け止めるのは行き過ぎ」と述べ、引き続き専門職大学を支援し豊岡市にも協力を求めるとした。

市長選の結果は、外目には先進的な中貝氏の地域振興策だが地域で暮らす住民には成長の実感をもたらさなかった表れといえる。中貝氏の在任中に豊岡市の人口はおよそ1割減少し、19年度の市内総生産(名目)は2878億円(県の試算値)と06年度に比べて1割減った。この間の県全体の総生産は2.6%増え、同じ但馬地域の朝来市では竹田城ブームを追い風に2割も増えている。新型コロナウイルス禍で先行きへの不安が募る中、中貝氏のまいた種の育ち具合に市民のいらだちが募ってもおかしくなかった。

関貫氏は子どもの医療費無料化などの公約の実現を優先する方針。一方で演劇に関しては専門職大学の開学を歓迎しつつも、豊岡演劇祭を新型コロナの感染状況次第で中止する可能性に言及した。また今年度準備していた男女格差解消の条例についても「条例化が(格差解消の)証しになるのか考えないといけない」とくぎを刺した。

独自のアプローチによる豊岡市の地域振興策は今後、優先順位や位置づけが徐々に変わり、市民の賛同を得られないまま姿を消す可能性もある。その時、ビジネス経験もあり20年秋まで豊岡市議会議長を務めた関貫氏が新たな未来図を示すことができるかが問われそうだ。(堀直樹)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン