SDGs幼少期から 環境保護の紙芝居など各地で広がる

おむつ卒業で海外に清潔なトイレ、環境保護を取り上げた紙芝居――。各地の保育園などで、幼少期からSDGs(持続可能な開発目標)の理念に触れ、身近に感じてもらう活動が始まっている。企画する企業の担当者は「子どもたちが将来、積極的に取り組むようになってほしい」と願う。
「カメを傷つけていたのは、わしたちみんなじゃ」。2021年10月上旬、名古屋市北区の「こどものまち杉村保育園」で、SDGs紙芝居「うらしまじろう」が披露された。昔話「浦島太郎」をモチーフに、ごみで苦しむカメを助けるため、主人公のうらしまじろうが村人と対策を考える話だ。
真剣に見入っていた園児らは「カメさんかわいそう」「(ごみを捨てたら)ダメだよ」と次々に感想を口にした。
紙芝居は、同園などを運営する名古屋市の「グローブ・ハート」が、大阪市のSDGsコンサルティング会社「ネクストエージ」に制作を依頼。仙台青葉学院短大の学生や芸術を専攻する大学生らが絵や脚本を担当した。かぐや姫版、わらしべ長者版も制作している。
ネクスト社は「人や企業のハードルを下げるのが私たちの存在意義。子どもにとってSDGsが当たり前となるきっかけを提供したい」としている。
グローブ社の施設では、子どものおむつが外れるたびに、海外に清潔なトイレを設置する基金へ110円を寄付している。同社は「親も子どもも自然とSDGsの価値観を身に付けてほしい」と期待する。
鳥取県米子市の「かいけ心正こども園」では、園で回収した資源ごみを換金し慈善団体に寄付する他、同県日南町の里山再生の取り組みに園児が参加している。担当者は「楽しさや面白さを感じて、卒園後も意識してくれれば」と話した。
幼児教育に詳しい田宮縁・静岡大教授は、日本平動物園(静岡市)と協力し、菓子や洗剤などの原料となる「パーム油」を作るため、東南アジアのオランウータンが生息する森が失われているとのデジタル絵本を制作した。
絵本を使っている幼稚園などでは「お菓子をがまんする」「シャンプーはワンプッシュ」などの言葉が子どもの口から自然と出るという。
田宮教授は幼少期の取り組みに関し「一時的な流行や、表面的な行動で終わっては意味がない」と指摘。「SDGsを自分のこととして受け止め、考えるようになることが重要だ」と話した。〔共同〕