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千年企業の半分は関西 社寺に由来、時代に合わせ変化

とことん調査隊

新型コロナウイルス禍で経営不振に苦しむ企業もあるなか、自然災害や戦争といった危機を幾度となく乗り越え、千年を超す歴史を持つ企業がある。「千年企業」の所在地を調べると、半分以上は関西にあった。長寿の秘訣や関西に多い理由を探ってみた。

京都市の今宮神社に千年企業の一つ、一文字屋和輔を訪ねた。1000年創業の日本最古の飲食店とされる。平安時代に悪霊退散祈願で神社に奉納された餅のお下がりを竹串に刺して焼き、参拝者に振る舞ったのが原点という。

商品も増やさず、通販も手掛けず、あぶり餅だけを売り続けてきた。どのように事業を続けてきたのだろうか。25代女将の長谷川奈生さんに聞くと、意外な答えが返ってきた。「あぶり餅は神さまへのお供え物。お参りの帰りに食べるから意味がある」としたうえで、「収益ではない。神さま、氏子さん、人々のお参り、すべてのつながりがあっての千年だ」と教えてくれた。

歴史を考えると、25代では人数が合わないが「記録で明確に確認できるのは25代前の江戸時代から」だそうだ。

長寿企業が多い関西。信金中央金庫の地域・中小企業研究所によると、千年以上前から存続する企業や団体、法人は全国に10社ある。このうち6社は大阪、京都、兵庫、奈良の4府県にあり、5社の祖業は社寺に関連する。鉢嶺実主任研究員は「飛鳥時代や平安時代は都が関西にあり、社寺が多くでき、関連する事業も発展した」と話す。

船舶用エンジン部品の五位堂工業(奈良県香芝市)は、五位堂鋳物師(いもじ)が奈良時代の745年に東大寺の盧舎那仏像の建立に携わったのが起源という。1614年には「国家安康」の銘で知られる方広寺(京都市)の梵鐘(ぼんしょう)鋳造に参加した記録が残る。

江戸時代までは梵鐘や半鐘を製造。明治から昭和初期にかけては農具や鍋、釜といった日用品をつくり、戦時中は砲弾などの軍事用品を手掛けた。戦後は工業製品に参入した。津田家仁社長は、鋳物製造技術を核とし、「時代の変化に柔軟に応じられたのが、継続の源だ」と話す。

同研究所の鉢嶺氏は「長寿企業には明確な経営スタンスや地域社会の支えがある。事業承継がうまい点も共通している」と指摘する。

日本最古の企業の金剛組(大阪市)は578年に創業。初代金剛重光が聖徳太子に招かれ、朝鮮半島から渡来し、四天王寺(同)の建立に携わったとされる。1400年以上存続できたのは「高い技術力のほか、組織構造もある」と刀根健一会長は話す。

当主には、大工の実力に加え、リーダーとしての資質が求められる。金剛組は直系の家族にこだわらず、その時々にふさわしい人物を選んできた。静岡文化芸術大学の曽根秀一准教授の研究では、25~40代目の間の当主9人は長男以外や他の家から登用している。1932年には38代目で初めて女性が当主になった。34年に第1次室戸台風で倒れた四天王寺五重塔の再建を手掛けた。現在41代目の当主は金剛組に在籍はしているが、経営には関与していない。

帝国データバンクによると、創業100年以上の老舗の全国での倒産・休廃業は2019年度に過去最多の579件だった。昌木裕司大阪支社情報部長は「市場縮小や後継者問題で継続意欲を失った老舗は多い」と指摘する。

足元ではさらに逆風が吹く。城崎温泉(兵庫県豊岡市)で717年に創業した旅館、古まんは新型コロナ禍で2回休業している。22代目当主の日生下民夫さんは「千年の歴史の中で幾度も経営危機はあったが、城崎温泉の旅館とともに共存共栄してきた。辛抱の期間は長いが乗り越えたい」と話す。危機対応力が求められる時代。千年企業の底力が問われる。(松本晟)

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