アラブの子に母語教育を 無償授業の運営資金募る

政情不安や混乱が続く祖国を離れ、日本で暮らすアラブ人の子どもたちに母語のアラビア語のオンライン授業を無償提供しようと、広島の中東研究者らが支援グループを立ち上げた。運営資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。
団体は「アラブの子どものための母語教育協会(アナーラ)」。広島市立大の田浪亜央江准教授(中東地域研究)と、広島県在住のアラブ人の親らが発足させた。
2011年の中東民主化運動「アラブの春」以降、シリア人ら多くのアラブ人が日本を含む外国に逃れた。11年以前に来日し、帰国できない人も。日本での生活が長引くにつれて問題になるのが、子どもの母語習得だ。
日常生活で日本語に慣れる一方、アラビア語を使う機会は家庭内に限られる。論理的に考える上で欠かせない読み書きの能力が身に付かないまま成長する恐れもある。
田浪氏は「日本には外国籍の住民が母国の文化を学ぶ制度が整っていない。親が教えるにしても限界があり、人口の少ないアラブ人同士で助け合うことも難しい」と指摘する。子育て中のアラブ人の知人らから相談され、グループをつくった。
授業は小学生対象。学年別のクラスに分け、それぞれ1回1時間、週3回行う。市立大の非常勤講師ズィヤード・ファッラージュさん(39)らシリア出身の2人が教える。広島と東京に住む19人を迎え5月17日に開講し、受け入れ人数を増やすことを目指す。
CFは6月13日まで。ファッラージュさんは「両方の言葉を話せる子どもは、日本とアラブの懸け橋になる存在だ」と話し、協力を呼び掛けた。〔共同〕