震災復興予算6.5兆円使われず ソフト面に課題、検査院
会計検査院の調査で、政府が2020年度までの10年間に計上した東日本大震災の復興予算44兆7478億円のうち6兆5765億円(約15%)が使われていなかったことが3日判明した。インフラ整備の費用を過大に算出するなどしていた可能性があり、見通しの甘さが改めて浮かんだ。

検査院は11〜15年度の復興事業の調査結果を5回にわたって公表してきた。今回は16〜20年度を対象にした。
11〜20年度の未執行額の内訳は、使い道がなく国庫に返納される不用額が6兆1448億円、事業の着工遅れなどで翌年度以降に回る繰越額が4317億円となった。検査院は「事業計画の変更で事業費を減額したり、実績が下回ったりしたため」とみる。
不用額は11〜15年度が4兆7880億円で、16〜20年度が1兆3567億円だった。予算全体に占める割合は14.2%から12.0%と微減にとどまり、国による見積もりが甘く事業費が過大に計上される構造は大きく改善していない。
防潮堤は岩手、宮城、福島の東北3県で21年度末時点の完成率が92.1%となった一方、避難対策が強化される「津波災害警戒区域」は3県で22年9月末時点で指定がゼロで、ソフト面の対策に課題が浮かんだ。
指定の停滞は土地のかさ上げ工事が続き浸水想定区域の作成が遅れたことなどが原因という。検査院は関係省庁に「ハードの整備だけに頼らない『多重防御』を推進できるよう自治体に助言すべきだ」と指摘した。
復興庁が把握する東北3県の県外避難者数が実態より多い可能性も判明した。
同庁は12年から避難先への住民の申請に基づき避難者数を把握してきた。ただ住民が定住したり帰還をやめたりしても申請がないと人数が変わらない仕組みだった。
宮城県では同庁は3670人と公表したが、県が実態を調べると21年3月段階で87人にとどまっていた。福島県(同月時点で2万8372人)や岩手県(同911人)も実際の避難者数は下回る可能性がある。
検査院は復興事業を効果的に実施するためにも人数把握は必要な情報だとして同庁に改善を要請した。