踏切ないのに線路横断、全国1万7000カ所 国交省調査

踏切がないのに、日常的に住民らが線路を横切って通行する「勝手踏切」が全国に少なくとも1万7066カ所あることが3日までに、1月時点の国土交通省の調査で分かった。
無断で線路に立ち入るのは違法だが、生活通路の役割を果たしている実態もある。事故を防ぐため、鉄道事業者は柵を設けるなど解消に取り組んでおり、費用と住民の理解が課題だ。
正式な踏切は、道路と交差した線路に遮断機や警報機を取り付けたり、警告表示を出したりしている。
国交省は、全国の鉄道事業者を通じて「踏切として認めていないが、線路横断の形跡がある箇所」を調査。2016年3月時点の約1万9千カ所から減ったが、モノレールのみの沖縄を除く46都道府県で確認した。最多は愛媛の1031カ所で、長野の872カ所、新潟の825カ所が続いた。
事業者によると、「踏切まで行くと遠回りになる」という例が多く、線路脇の土手を上りやすいよう階段が設けられた箇所も。自宅の目の前に後からレールが敷かれ、線路を渡らないと外出できない場合もある。勝手踏切に明確な定義はなく、事業者が把握していないケースもあるとみられる。
鉄道営業法は線路の無許可横断を禁じ、運行に支障が出るなどすれば刑法の往来危険罪に問われる場合がある。4月26日には神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄の線路を渡っていた小学生がはねられるなど、各地で事故も起きている。
事業者も対策に乗り出している。立体交差化などと比べてコストの小さいフェンス設置が中心だが、全区間の閉鎖は費用負担が膨らみ、通行路がふさがれることに住民が反対する例もある。国交省は「危険箇所を中心に、横断を防ぐ対策が急務」としている。
関西大の安部誠治教授(交通政策論)の話
鉄道事業者が確認した以外にも住民が日常的に横断している箇所は存在し、正確な実態把握は難しい。踏切の数が少ない路線や自宅前を線路が横切っている場合などは、横断を事実上黙認せざるを得ないケースもあるだろうが、特急がスピードを出す区間やカーブは死傷事故の危険性が高い。
事故が起きると事業者が責任を問われることもある。早急な対策が求められるが、横断する側も危険を十分認識する必要がある。
このうち遮断機と警報機付きの第1種が2万9717カ所、警報機のみの第3種は684カ所、いずれの装置もない第4種は2603カ所。
係員が遮断機を手動操作する第2種は現存しない。長時間待つ「開かずの踏切」も問題化、自治体や鉄道事業者は道路拡幅や歩道橋設置などに取り組んでいる。〔共同〕