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消えたインバウンド、路線価に影 下落する観光地

(更新)
インバウンドが激減した銀座5丁目交差点付近(6月28日、東京都中央区)

国税庁が1日発表した2021年分の路線価は、新型コロナウイルスが大きく影を落とした。インバウンド(訪日外国人)でにぎわい、上昇が続いていた観光地や繁華街は一転してマイナスとなった。一方で在宅勤務が広がり、郊外の住宅地は「移住効果」で上昇する地点も出ている。

コロナ禍の前はインバウンドでにぎわっていた大阪の繁華街ミナミ。中心にある戎橋周辺の心斎橋筋2丁目は前年から26.4%下落となった。大阪国税局によると、全国の各税務署管内の最高路線価で下落率が最大だった。

3回目の緊急事態宣言が解除され、6月21日からまん延防止等重点措置に移行したが、「休業中」と紙が張られたままの飲食店やシャッターを下ろした店舗が目立つ。

戎橋ビル前(大阪市中央区)

「外国人客はおろか日本人客もほとんど来ない」。道頓堀にある串カツ店店長の岡田啓二さん(61)はため息をつく。訪日客がコロナでいなくなり、周辺の飲食店が閉店するのも見た。「これほど長引くとは思わなかった。一刻も早く収束してほしい」

36年連続で路線価全国1位の東京・銀座中央通りもマイナスに転じた。20年春の緊急事態宣言と比べれば買い物客らは戻りつつあるが、コロナ前に列をなしていた訪日客の大型バスは姿を消した。

苦境の店舗は多く、飲食店が撤退したままの空きテナントも目立つ。

「店を開けていても閉めていても変わりがない」。足袋や手拭いを扱う明治元年創業の「銀座大野屋」の女性店主(73)は現在、営業を正午から午後4時までに短縮している。3回目の緊急事態宣言中は自主的に閉店した。コロナ前は訪日客らが訪れ、「今までは客が多くてヘトヘトだった。息抜きになっている」とも話した。

地方の観光地も苦境だ。岐阜県高山市は前年の10%上昇から一転して12.7%下落となった。前年の都道府県別の上昇率が10.5%で全国トップだった沖縄は、1.6%にとどまった。

コロナの感染拡大による在宅勤務の広がりの影響もみられた。

郊外の住宅地では引き続き上昇する地点もあり、つくばエクスプレスの守谷駅(茨城県守谷市)前は3.2%上昇した。近年、宅地やマンションの開発が進んだ地域に転入者が増えていたが、地元の不動産会社は「もともと東京からの問い合わせは多かったが、通勤しない人が増えたからか成約が増えた」と語る。

都内のインターネット広告会社に勤める倉嶋雄飛さん(39)は20年6月、都心から同市に移住した。在宅勤務が増えたことから移住を検討し、部屋が広く通勤する場合もアクセスが良い守谷市を選んだ。「静かで自然が多いので仕事をする環境はとてもいい。夜は星がきれいに見える」と満足している。

長野県軽井沢町のJR軽井沢駅前。地元の店主によると、5月の大型連休中、店を開けていたが客は来なかったという。観光客は落ち込んだが、路線価は横ばいだった。公示地価では住宅地に2桁上昇した地点もあり、60年近い業歴がある地元不動産会社の担当者は「昨年はテレワークで移住の需要があった」と話した。

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