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ヘイト対策法施行5年、各地で条例 ネットに課題も

「不当な差別的言動は許されない」とするヘイトスピーチ対策法が2016年6月の施行から5年を迎えた。禁止規定や罰則のない「理念法」だが、一部の自治体は条例制定などの対策に乗り出し、社会の意識は少しずつ変わり始めた。それでもインターネット上には心ない書き込みがあふれており、対策が課題だ。

「このような差別的言動はあってはならない」。東京都は昨年2月、都内で19年10、11月にあった街宣やデモの参加者が発した、在日コリアンを虫に例えるなどの言葉を強く非難した。対策法を受けて成立した都の人権条例に基づき、差別と認定した表現を公表した。公表は3回目だ。

川崎市の担当者(右)に署名を提出する市民団体「ヘイトスピーチを許さない かわさき市民ネットワーク」のメンバー(5月13日、川崎市役所)=共同

大阪市も、対策法の前に公布された条例でヘイトと認定した9件の行為を公表している。

川崎市はさらに踏み込み、違反行為を繰り返した場合に最高で罰金50万円を科すとした条例を全国で初めて制定した。都と大阪の条例に同様の規定はなく、「抑止効果がない」との批判もある。

都が20年度に実施したインターネットアンケートでは、ヘイトデモなどを見聞きして「不愉快だ」と感じた人は47.3%、「日本の印象が悪くなる」と思った人は37.0%だった。母数は異なるものの、前年度からそれぞれ2.9ポイントと1.6ポイント増えた。「問題ない」と答えた人も20年度は約5ポイント減った。

都の担当者は「ヘイトが問題だという認識が広まっている。対策法や条例で啓発が進んだ効果だ」と胸を張る。大阪市の担当者も「何がヘイトに当たるのかを市民に情報提供することで、解消すべき問題が社会にあることを示せた意義は大きい」と強調する。

課題はネット上のヘイトだ。SNS(交流サイト)には、外国人をののしる言葉があふれる。

だが川崎市の罰則も、ネットの書き込みは対象外。市が差別を受けた被害者に代わってサイトの運営者に書き込みの削除を要請する仕組みもあるが、削除までに時間がかかる。手続きが進む間に新たな書き込みがされる「いたちごっこ」になりがちだ。

非政府組織(NGO)「外国人人権法連絡会」事務局次長の瀧大知さんは「ネットで見たデマを真に受けて差別主義者になった人同士がネットで交流し、差別思考を強めている」と指摘。「マイノリティーへの差別行為を禁止する実効的な規制法を、国がつくるべきだ」と法整備の必要性を訴える。〔共同〕

▼ヘイトスピーチ対策法 国外出身者とその子孫の排除を扇動する不当な差別的言動は「許されない」とし、国の責務、自治体の努力義務として相談体制の整備や教育、啓発活動の実施を求めた法律。法務省はヘイトの例示として「〇〇人は殺せ」「祖国へ帰れ」などの文言や、人を昆虫に例える言動などを挙げる。

表現の自由を侵害する恐れがあるとして禁止規定や罰則はない。インターネット上のヘイトについては「取り組みに関する施策を実施する」と付帯決議に盛り込まれている。〔共同〕

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