SNS解析システム導入へ AI捜査で人物相関図作成
警察庁は容疑者側のSNS(交流サイト)を人工知能(AI)で解析し、人物の相関図を作成する捜査システムの導入を決めた。関係者が30日までに明らかにした。SNSは特殊詐欺などで多数の関与者をつなぐ「犯罪インフラ」として使われている側面があり、指示役を含む組織の全体像を解明、摘発に結び付ける考えだ。
年内に警察庁と警視庁などの5都府県警で運用を始め、全国の警察に広げる方針。捜査員らによる解析に比べ、幅広く効率的に情報収集できるという。
警察庁によると、AIで解析するのは組織的な犯罪に関与した容疑者や捜査対象者が使うSNSのアカウント。ツイッターの「フォロー」、フェイスブックの「友達」といった機能の承認・登録先や、コメントの返信相手などをたどり、つながるアカウントを調べて相関図を作成する。
相関図から浮上した人物のコメントは捜査員が精査する。内容などから勧誘役や指示役のアカウントを突き止め、このアカウントを再度AI解析に掛けて新たな相関図を作成。解析と精査を繰り返して犯罪組織の「可視化」を目指す。
警視庁のほかに運用を始めるのは大阪、埼玉、千葉、神奈川の4府県警。それ以外の警察本部は導入まで警察庁に解析を依頼する。複数の警察にまたがる事件でも同庁のシステムを使う。
一方、無関係な人まで解析の対象とされプライバシー侵害の懸念がある。警察庁幹部は「インターネット上で公開状態のデータのみを解析し、非公開の情報が必要と判断した場合は令状を取得して別途捜査する」とした上で「システム使用は犯罪関連に限定され無関係な情報は調べない」と話している。
特殊詐欺集団や不正送金グループといった犯罪組織は近年、SNSを連絡ツールとして利用し、「闇バイト」と呼ばれる違法行為への勧誘も急速に広がる。末端の者はSNSだけで組織とつながり全容解明を阻む要因にもなっている。〔共同〕
捜査終了後は無関係なデータを蓄積せずに速やかに消去することや、警察が集めた情報が適正に扱われているのか、事後的にチェックする仕組みが求められる。
犯罪捜査の高度化は必要だが、野放図に広げず法整備を目指しルール作りをすべきだ。〔共同〕