運航会社社長の一問一答「至らなさ感じる」 知床観光船
北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が遭難した事故で、運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の桂田精一社長が27日、同町で記者会見した。主な一問一答は以下の通り。

――安否が分からない家族にはどう説明したのか。何を感じたか。
「正直なところ謝罪をするしかない。できる限りのことをやってあげたい。それしか今、考えることはできない。やり場のない感情も含め、精いっぱい受け止めるだけだった」
――家族からは説明不十分との声が多い。なぜ説明会や会見までに時間がかかったのか。
「まずは被害者の家族への対応と救助活動を第一に考えた。ご家族に、誠心誠意尽くすことと思っていたが、私一人の力ではうまく対応できなかった」
――4月23日は他の業者よりも早いタイミングの営業になるが、誰が判断したのか。
「最終的に判断はすべて私だ。(会社は)もともと団体客メインであり、各旅行会社の要望に応じて、いつも早い出航を行っていた」
――4月23日に出航を判断した理由は。
「天候の急変などで予定地点まで到達できない場合、(途中で引き返す)条件付き運航になるとあらかじめ伝えている。天気が悪くなる場合は船長判断で戻ることを長年やっている。(当日は)豊田(徳幸)船長と打ち合わせをして、私が決めた」
――事故を知った経緯は。
「知床遊覧船の事務所に詰めていた社員から携帯電話で連絡が入った。すぐ漁業関係者に連絡し、今後の行動(の指示)を仰いだ。救助チームがあって出航させる手はずを取るということで電話を切った。その後波が高くなって風も出てきて助けに行けないかもしれないと連絡が入った。結局は海上保安庁に任せることになった」

――出航は、船長が天気図などを見て判断した上で社長が承認する形だったのか。
「そうだ。基本的にどの会社も最終的には船長判断になる」
――会社の(出航基準などを定めた)安全管理規程はどのようになっていたのか。
「波が1メートル以上、風速8メートル以上で欠航し、視界は300メートル以上ないと出航できない」
――今考えると判断はどうだったか。
「今となれば事故を起こしてしまって、判断的には間違ったと感じている」
――強風注意報や波浪注意報が出ていたのは把握していたのか。
「把握していた。(荒れるのは)午後からということで、午前中はしけておらず、風もなかった」

――昨年、事故が2回起き、事務所の無線用アンテナが壊れている中で出航した。安全管理は行き届いていたのか。
「結果として安全管理は行き届いていなかった。私の至らなさだと感じている」
――無理な出航を指示したという話が出ている。会社の収益のためにそういう思いはなかったのか。
「会社の収益は常に考えているが、そのために無理に出航させたことはない」
――観光船に衛星携帯電話は積んでいたのか。
「私は積んでいたと認識していたが、実際は修理に出していて故障中だった。積んでなかったと聞いているが、確認できていない」
――事故の一番の原因は何か。
「事故の原因が分からないことを含めて、私の至らなさだと感じている」
(渡辺夏奈、亀田知明)