福島の除染などの入札、5割が参加1者のみ 国費膨張か - 日本経済新聞
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福島の除染などの入札、5割が参加1者のみ 国費膨張か

(更新)

東京電力福島第1原子力発電所事故により出た放射性物質を含む土壌や廃棄物などの処理事業で、環境省の福島事務所が実施した入札の5割が1事業者しか参加しない「1者応札」だったことが3日、会計検査院の調査で分かった。特定業者に依存する構図が横行し国費の支出が膨張した可能性があり、検査院は同省に改善を求めた。

国は放射性物質汚染対処特措法に基づき、除染や廃棄物の処理、廃棄物を長期保管する中間貯蔵施設の整備を進めてきた。2011〜21年度に投入された国費は5兆1600億円に上った。

検査院は最も契約件数が多かった環境省福島地方環境事務所が16年4月〜21年9月に発注した984件(1兆7649億円)を調査した。一般競争入札となった735件に占める1者応札の割合は49.3%となった。国が21年度までの6年間で発注した公共事業などの一般競争入札の1者応札率(33.6%)より15.7ポイント高かった。

1者応札は競争原理が働かず、予定価格に対する落札価格の比率(落札率)が上がって発注者の支出が膨らむとされる。今回の調査対象事業の平均落札率は1者応札が94.6%で、複数応札(81.3%)よりも13.3ポイント高かった。

除染事業などの1者応札率の高さは、各府省庁の事業の効果や予算の無駄を点検する「行政事業レビュー」で17〜21年度に複数回指摘されていた。しかし1者応札率は18年度以降、ほぼ5割付近で高止まりしていた。

環境省は15年以降、入札説明会に参加した事業者に対し、応札しなかった理由をアンケートで尋ねてきた。回答は「特定の事業者が継続して受注しており、他者が参入するのは困難」といった理由が目立った。

検査院が継続して受注した業者に理由を聞いたところ「過去の受注で使用した宿舎や拠点などを転用でき、工事原価が低減し、収益が期待できる」と答えた。地元下請け企業との関係構築が進み、作業員の確保がしやすいこともあるとみられる。

IT(情報技術)分野では、システム開発を受注した事業者がその後の保守や修理も請け負う「ベンダーロックイン」が問題になっている。除染や廃棄物処理でも同様の構造が横行している可能性がある。

環境省は新規参入業者向けに除染の方法を共通仕様書としてまとめたり、入札の公告期間を延長したりする改善策を実施してきた。検査院は「改善策の状況などを確認し、競争性の確保に引き続き取り組むことが必要だ」と指摘した。

同省は1者応札の要因を尋ねるアンケートの対象を拡大するなどとし「調査結果を踏まえ、競争性を高めるための入札方式を改めて検討したい」とコメントした。

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