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「黒い雨」救済範囲、焦点 原告「同じ状況なら手帳を」

(更新)
記者会見する黒い雨訴訟の原告の高東征二さん(右から2人目)。右端は原告団長の高野正明さん(27日午後、広島市)=共同

広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」訴訟に関し、上告断念を決めた政府は27日、早急に救済措置をとる方針を示した。対象には長崎も含められる見通しで、今後は救済範囲が焦点となる。原告団は安堵の色を浮かべつつも「亡くなった原告と一緒に迎えられなかったのは悔しい」などと複雑な思いを吐露した。

この日閣議決定した首相談話は、黒い雨を浴びながら国の援護を受けられないのは違法と訴えた住民84人(うち14人死亡)全員を被爆者と認定した一、二審判決を受け、上告見送りの理由を説明。「一定の合理的根拠に基づいて、被爆者と認定することは可能」とし、原告全員に「被爆者健康手帳を速やかに発行する」と約束した。

田村憲久厚生労働相は今後の救済対象について「同じような事情にあった方も、訴訟への参加、不参加にかかわらず認定して救済できるように早急に対応していきたい」と語った。今後、被爆者認定に関する指針を改定し個別認定で対応するほか、救済措置の対象に長崎も含めて検討していくとみられる。

ただ追加認定の規模については「同じ事情の方がどういう方なのか、県や市と相談して指針を作っていく」と述べるにとどめた。

政府の有識者検討会で議論している援護対象区域の拡大については「一定時間かかる。1カ月ではなかなか難しい」と話した。今後は原告以外の救済のあり方が注目されるが、広範囲の救済につながるかどうかはなお不透明だ。

黒い雨訴訟の原告団と弁護団は27日、広島市内で記者会見を開いた。原告の高東征二さん(80)は「原告以外の被害者にも手を差し伸べてほしい」と訴えた。原告弁護団事務局長の竹森雅泰弁護士は「率直に良かったと思うと同時に、亡くなった原告もおり、この瞬間を一緒に迎えられなかった悔しさもある」と複雑な胸の内を明かし、「原告らと同じような状況にあった人にも早期に被爆者健康手帳が交付されるべきだ」と訴えた。

内部被ばくの健康影響を広く認めるべきだとした広島高裁判決について、首相談話が「被爆者援護制度の考え方と相いれない」と言及したことには批判の声も。原告団長の高野正明さん(83)は、政府の姿勢に「裁判と同様、ここでも科学的根拠を持ち出した。国の考えが根本から変わったわけではない」と述べた。

国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者認定を求めている「被爆体験者」による訴訟の原告側は27日、長崎市で記者会見し、首相談話に対し「被爆者援護法の理念に基づき、今こそ広島と長崎について同時に救済を図るべき時だ」と述べた。〔共同〕

広島の黒い雨 原爆投下後、爆心地の広島市やその周辺に降った放射性物質やすすなどを含む雨。国は、爆心地に隣接し、高い放射線量が検出された地域を被爆者健康手帳が交付される「被爆地域」に指定。1976年、大雨が降ったと推定した北西側の長さ約19キロ、幅約11キロの楕円形の範囲を「特例区域」とした。区域内にいた人は援護対象となり、無料で健康診断が受けられ、一定の疾患がある場合は被爆者手帳を取得できる。〔共同〕

「手帳交付、来月の原爆忌までに」広島市長

広島市の松井一実市長は27日、国が上告を断念した「黒い雨」訴訟の原告84人に対し、被爆者健康手帳を広島原爆の日の8月6日までに交付したいと述べた。政府が原告と同じ事情にあった人も救済すると表明していることには「救済対象者がこちらの想定よりも狭まるようであれば、しっかり意見を申し上げる」と話した。

厚生労働省が昨年11月に援護区域の見直しを視野に設置した有識者検討会にも触れ「科学的知見を超え、救済範囲を拡大するための具体的検討をしなければいけない。議論の進め方を改めていただく必要がある」と注文を付けた。

広島県の湯崎英彦知事は、首相談話を受けて記者団の取材に応じ「結論として『救済する』という内容で評価できる」と述べた。

談話は、控訴審判決が内部被ばくの健康影響を広く認定すべきだとした点を問題視している。湯崎氏は「これまでも内部被ばくの有無で(黒い雨被爆者を)認定する、しないということではなかった。実務上はそれほど大きな影響はない」との認識を示した。〔共同〕

「黒い雨」訴訟を巡る首相談話の骨子


▼被爆者援護法の理念に立ち返り、上告しない
▼判決は、原爆の健康影響に関する過去の判例と整合しない点があり、重大な法律上の問題点があり、本来なら受け入れがたい
▼84人の原告に被爆者健康手帳を速やかに発行する
▼原告と同じような事情にあった人々に対しては、訴訟への参加・不参加にかかわらず、救済できるよう早急に対応を検討する

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