病院サイバー対策で支援組織 厚労省主導、日本医師会と
身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」のサイバー攻撃により、病院の被害が相次いでいる問題で、政府と日本医師会(日医)などが医療分野のサイバー攻撃対策の情報を収集し、共有する新組織をつくることが27日、厚生労働省への取材で分かった。厚労省が主導し、日医や製薬、医療機器メーカーの業界団体が2022年度内に設立。病院の支援態勢を強化する。
厚労省は年内にサイバー対策の専門家を交えた検討チームを設け、組織形態や運営方法を具体化する。病院の情報システムがランサムウエアに感染し、電子カルテが暗号化されて閲覧できず、診療停止に追い込まれる被害は後を絶たない。情報システムとインターネットを安全に接続するためのVPN(仮想私設網)機器の欠陥を突かれ、ハッカーに侵入される事例が多い。
厚労省は病院に対し、欠陥を速やかに修正するとともにデータのバックアップを取るよう呼びかけてきたが、十分に浸透せずに被害につながっていた。
業界ごとにサイバー対策の情報を収集し、共有する組織はISAC(アイザック)と呼ばれる。厚労省は先行する電力や金融のISACをモデルとし、政府と業界が緊密に連携する医療版ISACの設立を後押しする。
行政機関のサイバー対策を取り仕切る内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と協力し、日医などと最新の攻撃情報や情報システム機器の欠陥対策を病院に提供する。サイバー対策を後押しするだけでなく、被害病院の復旧も支援する。医療業界では一般社団法人の医療ISAC(東京)が活動しているが、政府は関与していなかった。
10月には大阪急性期・総合医療センター(大阪市)などが立て続けに攻撃された。〔共同〕