コロナで長期休校、学力低下見られず 文科省
文部科学省は28日、小学6年と中学3年を対象に同一問題を使って学力の変化をみる「経年変化分析調査」の結果を公表した。最長で約3カ月に及んだ2020年春の新型コロナウイルスによる長期休校の影響は顕著には見られなかった。一方、家庭の経済状況による学力格差が広がった懸念があるといい、同省は引き続き慎重に調査結果を分析する。
調査は、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の一環として昨年6月に実施された。13年度、16年度に続き今回は3回目。
国語と算数・数学のほか、中学では今回から英語も対象教科に追加され、全国の国公私立の小中学校約1300校を抽出して調査した。経年での変化を確認するため、すべての学校を対象とした学力テストの本体調査とは別に非公表の同一問題を出して比較した。

問題の難易度などをもとに算出する「学力スコア」の平均で比較すると、小学生の国語は505.8ポイントで16年度と変わらず、算数は507.2ポイントと5.2ポイント上昇した。中学でも同様の傾向で、国語は511.7ポイントで3.1ポイント、数学は511.0ポイントで9.0ポイントそれぞれ上がっていた。
学力テストを巡っては、全国約2万9千校の計約194万人を対象として昨年5月に実施された調査の結果が既に公表されている。20年3月から最長3カ月に及んだ臨時休校による対面授業減少の影響が注目されたが、同省は「全体でみると、コロナ前後で学力低下などの変化は見られなかった」と説明した。
背景のひとつとして、休校による学習の遅れを取り戻そうとする学校側の取り組みがあるとみられる。文科省によると、夏休みなど長期休暇を短縮して授業を行った小中学校はいずれも9割を超えていた。
一方、28日に開かれた学力調査に関する専門家会議では、結果について「上位層と下位層の差が開いた可能性もある」といった指摘もあった。
文科省も学力格差について調査を進める必要があるとみており、今回は児童生徒の保護者にも教育に対する考え方や年収、最終学歴などを調査した。今後、この回答内容と経年変化分析調査の結果を合わせて分析し、家庭の環境で学力格差が開いた可能性がないかなどを詳しく調べる。
また、休校中の家庭での学習支援にばらつきがあり、学力に差が生まれていた可能性もあるため、同省は保護者への調査ではコロナ禍の対応についても質問した。
休校期間中、子どもの勉強を手伝ったかとの質問に「全く手伝わなかった」と答えたのは、小学校で17.3%、中学校で49.7%に上った。学校の課題ができているか全く確認しなかったという保護者も、小学校で5.8%、中学校で16.9%いた。
同省は詳細を分析した上で、今後の施策に生かしたい考えだ。