「本を未来に」障害者誇り 国会図書館蔵書デジタル化

国立国会図書館(東京・千代田)が進める蔵書のデジタル化に障害者が一役買っている。7月から全国8カ所の作業所で延べ約500人が本のスキャンやデータ入力などを開始した。スキャン以外の周辺業務に携わる人も多く、関係者は「後世に残る仕事」に誇りを感じている。
国会図書館には本や雑誌、新聞のほか地図や映像など約4622万点の所蔵資料があり、年間約70万点が新たに納められる。
デジタル化されているのは2022年3月現在、古い資料を中心に約281万点にとどまる。21年に推進計画を定め、本については5年間で100万冊以上の実施を目指している。
デジタル化の業務を受注しているのは大手印刷会社などだが、障害者就労を進める日本財団が21年度に参入。印刷業をもともと手がけていた障害福祉事業所を中心に、22年度は山形や福岡、熊本など8カ所に約3万冊の作業を委託している。同財団が約7億5千万円を助成し、高度な機能を持つスキャナーや耐火保管庫、IT(情報技術)機器などを整えた。
「古い本は紙が劣化して破けやすいので、気を付けて扱っています」。8カ所の一つ「コロニー東村山」(東京都東村山市)でスキャン作業に従事する男性(54)はそう話す。
男性は脚に障害があり、この事業所に通って働く。スキャンは余分な光が入らないよう、黒い布で仕切った暗室で実施。本は見開き2ページを1こまとして読み込む。一般的なスキャナーと違い、本を上向きに置いて機体上部のカメラで撮影する。
「余白は全体の10%以内」「中央のとじ込み部分が黒くならないように」といった細かい注意点があり、一枚一枚めくって丁寧に進める。
根気が要るが「黙々とやる作業は自分に合っている」と語る男性。「大事な本を未来に残す仕事。誇らしく感じる」と胸を張る。
スキャンを担当するのは約10人。システム開発や目次データの作成などの業務もあり、知的・精神を含め障害者計約20人が携わる。
これらの仕事を支える業務もある。例えばスキャンの際はほこりが天敵。頻繁な清掃が必要で、そこでも障害者が働いているという。
事業責任者の高橋宏和副所長は「作業には訓練が必要で、誰でもできるわけではないが、一方で周辺業務もあって幅広い人が関わっている」と話している。〔共同〕