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「カネミ油症」国が子・孫を初調査、症状聞き取りや検診

(更新)
健康調査について息子たちにどう伝えるか悩むカネミ油症被害者全国連絡会の三苫事務局長(8月、福岡市)=共同

1968年に起きた食品公害「カネミ油症」で、国は8月から認定患者の子や孫を対象にした初の健康調査を始めた。調査票で症状を聞き取るほか、油症検診の受診も求め、患者に認定するかどうか判断する。早期の実態把握を求めてきた患者側は、偏見への懸念など複雑な事情を抱えながら調査の進展を見守っている。

倦怠(けんたい)感、頭痛、皮膚の炎症――。長崎県諫早市の認定患者、下田順子さん(60)は、自身の子どもが訴える不調について「ずっと自分の家だけの問題だと思っていた」と話す。

長女の恵さん(32)は生まれた時に皮膚が浅黒く、小さい頃から病弱だった。ある時、患者同士の集まりでそのことを打ち明けると、複数の親から「うちも」と声を掛けられ衝撃を受けた。

順子さんはカネミ油が多く流通した同県五島市出身。小学校入学前、近くの商店で買った油1升を料理で使い、家族全員が口にした。健康だった体はさまざまな不調に襲われた。

すさまじいだるさや、突然の鼻血。黒くなった爪ははがれ、背中は膿(う)んだ。「同級生からいじめられ、つらくて心が爆発しそうだった」

授かった大切な子どもにも被害は及んだ。恵さんは何度も油症検診を受けたが、ダイオキシン類の血中濃度が低く、患者として認定されていない。恵さんは「直接摂取した人と2世が同じ基準なのはおかしい。今回の調査で次世代共通の症状が分かり、血中濃度以外での認定につながれば」と期待する。

支援団体が子や孫を対象にした調査では、一般成人よりも倦怠感や腰痛などの症状を訴える割合が多かった。国によると、認定患者の子は推定約300人。国は調査票の10月末までの回収を目指している。

カネミ油症被害者全国連絡会の三苫(みとま)哲也事務局長のもとには9月、調査票が届いた。2人の息子にどう伝えるか、しばらく悩み手元に置いた。

息子は父親が患者であることを知っているが「余計な心配を増やすのでは」との不安がある。自分も妻に病気をどう打ち明けるか悩んだ経験があり「将来家庭を持つかもしれない息子に同じ思いはさせたくない」。

国に訴え続け、ようやく実現した調査。意を決して息子と話し、調査に回答するかの判断は本人に任せた。三苫さんは「調査が次世代の苦しみや症状を明らかにする大きなきっかけになる。これまで口を閉ざしてきた患者も勇気を出して伝えてほしい」と話した。〔共同〕

カネミ油症 1968年に西日本一帯で起きた食品公害。カネミ倉庫(北九州市)製の米ぬか油を摂取した人々に、吹き出物や手足の痛みなどの症状が出た。原因は製造過程で混入した強毒性のポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシン類。色素沈着した乳児が生まれた事例もあり、次世代への影響が指摘されている。
都道府県から患者認定されるには原因物質の血中濃度が基準値超であることが重要とされる。国によると、今年3月現在の認定患者数は2353人。うち子ども世代は約50人。〔共同〕

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