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鉄道事故の被害者支援計画、中小で遅れ 策定は4割

鉄道などの公共交通事業者が大事故を起こした場合に備え、負傷者や遺族らの支援計画を作る動きが広がっている。国が策定を促しているためだが、資金や人的余裕がない中小事業者にとってはハードルが高いのが実情だ。策定済みでも人繰りの厳しさから実効性を不安視する声があり、識者は事故時に事業者が連携して対応する仕組みが必要だと指摘する。

2005年のJR福知山線脱線事故(兵庫県尼崎市)で遺族らがJR西日本の対応に不信感を持ったことを受け、国土交通省は13年、遺族らの提言を基に支援計画の作成指針をまとめた。細やかな情報提供や、相談を受け付ける体制を計画に盛り込むよう求めており、公表することで信頼感につながると強調する。

国が中小事業者を含め一律に計画の策定を求めるのは、イベントなどで一時的に大人数が集まり、多数の死傷者が出るケースが想定されるためだ。1991年5月には滋賀県甲賀市(旧信楽町)で第三セクターの信楽高原鉄道と、「世界陶芸祭」の開催に合わせて乗り入れたJR西の臨時列車が正面衝突し、双方の乗客ら42人が死亡した例がある。

同省によると、全国の鉄道事業者約200のうち、今年4月1日時点で計画策定済みは約80にとどまる。JR各社や大手私鉄が早期に策定する一方、中小鉄道は広がりに課題が残る。指針は被害者の心情を理解した上で支援ができる人材を育成し、中長期にわたり一貫して支援に当たる責任者を定めておくことも要求しており、負担が大きいとみられる。

計画の重要性を認識して策定に乗り出した中小事業者の中には、事故の経験のなさから具体的な運用を見通せないケースもある。20年7月に策定した江ノ島電鉄(神奈川県藤沢市)の担当者は「大事故時に被害者支援チームを立ち上げる規則だが、事故によって必要とされる支援の規模感が分からず、どこまで対応可能か不安だ」とこぼした。

関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「仮に社員が50人の小さな事業者が事故を起こして10人の死者が出たとなれば、最初の数カ月は社員が遺族に付きっきりになり、圧倒的にマンパワーが不足する」と指摘。業界団体が主導し、全国の事業者が社員を応援派遣する広域の支援体制づくりを提唱する。

また「加害企業として何に留意すべきか、事故の反省を基に細かく想定しているJR西に他社が学ぶことも必要だ」と話し、各地の運輸局が管内の事業者を集め、JR西の経験を共有する取り組みが有意義だと訴える。〔共同〕

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