障害者結婚で「不妊処置」、監査で実態解明へ 北海道

北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホームで、結婚を希望する知的障害者の男女8組16人が不妊処置を受けていた問題は、25日で発覚から1週間がたった。同福祉会の樋口英俊理事長は強制ではないとの認識を強調。任意調査を進めていた道は26日以降、障害者総合支援法に基づく監査に切り替えて実態解明を急ぐ。有識者からは障害者らの支援体制拡充を望む声が上がる。
同福祉会では1998年ごろから、結婚や同居を望むカップルに対し不妊処置を求めていたことが明らかになった。
樋口氏は12月19日に開いた記者会見で「(処置が)結婚の条件とはひと言も言っていない」とした上で「子どもがいじめられた時に親の責任を果たせるのか。全部説明し、選択してもらう」と強調。子育ては「うちでは支援できない」と述べた。
樋口氏の会見後、処置を受けてグループホームで同居する40代カップルも、同福祉会の幹部が同席する中で会見した。子どもについて「必要ない」とし、施設を出ることを考えたことがあるかとの問いには「ここを出ちゃうと生活は無理」と言い切った。
同福祉会の施設の利用経験がある男性は、不妊処置を受けた人を「6人くらい知っている」と語り、処置に関する話は「外部にはタブー」と明かした。
北海道南部で多くの施設を運営し、ホームページによると利用者は計400人規模。障害福祉サービス以外にも幅広い事業を展開し、地元での影響力は大きい。それだけに、福祉関係者からは「処置を選択肢として提案するのも問題だ」との声も上がる。
障害者総合支援法に基づく監査は、報告や書類提出などを命令できるようになるほか、従わない場合は障害福祉サービス事業者の指定を取り消すことも可能となる。道は来年1月には、道内の他の施設で同様の事例がないかも調査する。
日本障害者協議会や全国自立生活センター協議会など関係団体からは、障害のある人の子育てを支援する仕組みづくりを求める声明が相次いだ。
障害者施設での勤務経験がある会津大短期大学部(福島県)の市川和彦教授(障害者福祉論)は「子育ての問題を施設側だけが抱え込むのでなく、児童相談所や保健所と連携する必要がある」と行政の支援、相談体制拡充を求めた。〔共同〕