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日大理事長に林真理子氏就任 「新しい風」女性理事9人

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作家の林真理子氏は1日、日本大学理事会の承認を受け新理事長に就任した。新体制は外部人材を多く起用し、22人の理事のうち9人が女性。林氏は記者会見で「新しい風が吹いている。議論活発化を確信した」と述べた。理事長に強い権限が集まり、ガバナンス(統治)の機能不全が問題視された組織風土を立て直せるか問われる。

「私の意をくんで素晴らしい女性を理事に送り出してもらった。マッチョな体質を変えたいのが第一」。1日午後5時、東京都千代田区の日本大学会館で始まった記者会見。林氏は黒いスーツ姿で登壇し、理事長としての意欲を語った。

日大の新たな理事会は理事長の林氏を含め22人で構成される。新体制は女性と外部人材が目立つ布陣だ。

日大は1889年の創立以来、理事は全て男性だった。新たな理事には科学技術振興機構シニアフェローの渡辺美代子氏や元日本弁護士連合会副会長の平沢郁子弁護士らを起用した。林氏を含め女性の理事は9人で、理事会のうち3分の1以上を占める。

私立大の理事は男性が多い。日本私立学校振興・共済事業団が2019年3月にまとめた調査によると、大学を設置する約510の学校法人の常勤・非常勤理事は1法人あたり平均11.0人。うち女性理事は平均1.3人と割合では1割程度の水準だ。日大の女性の起用の多さが際立つ。

外部からは精神科医の和田秀樹氏らを起用した。理事会のうち半数超は現職教職員を除く外部人材で占められる。学内理事の権限が強かった田中英寿元理事長の体制下では理事会での議論は少なく形骸化していたとされ、閉鎖的な体質を改善する狙いがある。

一連の不祥事により日大のイメージは大きく傷ついた。林氏は不祥事について調査組織を改めて立ち上げ、背景を調べる考えを表明。「(第三者委員会による)報告書を読んだが、本当にこれだけかなとの疑念を拭い去れなかった」と述べた。

田中元理事長の影響力を排除できるかという質問には「サラリーマンがトップの意に沿うのは仕方ない。トップがいなくなったので、親田中派はもういないと信じている。いるとしたら反林派だが、会話を重ねるしかない」と語った。

日大の22年度一般入試の志願者数は約9万3千人で、前年度比4.3%減少した。ある職員は「学生や卒業生が胸を張れない事態。将来的な志願者数にも影響が続くのでは」と懸念する。

日大再生の目標を問われ「志願者数がトップになること」と明言した林氏。23年度入試の志願動向は、信頼回復に向けた取り組みが評価されたかどうかの一つの指標となる。

文部科学省が事業団を通じ配分する私学助成金の交付の可否も焦点だ。日大は20年度には全国で2番目に多い約90億円が交付されたが、不祥事を受け21、22年度分は全額不交付となった。事業団が交付の可否を審議する23年10月ごろまでに運営の改善が認められれば23年度分として25%交付され、最短5年で満額に戻る。

改革に向けては、日大が4月に文科省へ示した再発防止策の進捗がポイントになる。日大は▽透明性の高い人事制度の構築▽内部通報制度の整備▽学生の意見を大学運営に生かす仕組み▽信頼回復に向けた広報活動の強化――を挙げていた。

理事に就いた科学技術振興機構の渡辺氏は取材に「新理事長に林さんを迎えた日大の本気度を感じて引き受けた。日大で改革が進めば、古い組織を変えようとする他大学や企業の背中を押すことにもつながるはずだ」と話した。

(下川真理恵、茂木祐輔)

外部人材主導の改革、現場の協力カギ


日本の私立大はオーナーや教職員出身者が運営することが多い。外部人材主導による改革を進めるためには、現場の教職員らの理解や協力を得られるかがカギとなる。
日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、大学を設置する学校法人の理事長の37%は創設者やその親族が占める。就任前の経歴をみると学内教職員が53%で最も多い。
外部から理事長を招いたケースでは、日本IBM元会長の北城恪太郎氏が2010~19年に国際基督教大(ICU)の理事長を務め、大学財政の収支均衡につなげた。東洋大はセブン銀行元会長の安斎隆氏が18年から理事長を務める。
ただ学内の人脈や支持基盤がない中、自らの考えを浸透させるのは簡単ではない。神戸大の鈴木竜太教授(経営組織論)は「内部事情に詳しくない外部人材は意見が封殺されたり、『お飾り』になったりする恐れがある」と話す。
ある日大教授は林真理子理事長について「組織マネジメントの実務経験がなく、現場の教職員の信頼を得るのは簡単ではないだろう」とみる。
鈴木教授は外部人材による改革について「既存の組織の協力をどう引き出すかが重要だ。転換期のリーダーは考えや価値観を示すだけでなく、人々を巻き込んでいく手腕が求められる」と指摘。組織の将来像について理事会内で意思統一をはかることが不可欠としている。

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